演 目
ツバメ恋唄
観劇日時/12.6.30. 19:00〜20:30
劇団名/楽市楽座
出演・演奏/佐野キリコ・長山現・萌
衣装/徳島洋子 小道具/飯島政志
上演場所/旭川市 市民活動交流センターCoCoDe野外広場

別世界の不思議な体験

 父親ツバメのスワロウ(=長山現)と、その子のツバメ(=萌)が、南へ帰る旅の途中で出会った蝶(=佐野キリコ)に恋し一緒に南へ行こうと誘う。蝶は実は亡霊のようであり、二人はそれを知りながら尚も同行を勧める。
 生きているものはいずれ死ぬのであり、蝶も亡霊であると同時にその過程であるのかも知れない。人生とは死への旅の途中であるということか……
 その道中のテンヤワンヤを描くのだが、ギターを中心に3人は様々な楽器を使い、父親は死神と早変わりの二役を演じたり、サービス満点の大汗掻いた熱演だ。
 野外の広場に造られた、直径5メートルほどの手製のプールに浮かせた舞台は、水流ポンプで常にゆっくりと回転し、180度に取り囲んだ観客は上下(カミシモ)前後(まえうしろ)のない丸裸の舞台を観ることになる。
 観客は、役者の乗せに応じて手拍子を打ったり拍手をしたり、投げ銭を舞台に投げたりする。開演前に色紙を配って、この劇団は投げ銭だけで成り立っているのだ。
 観客は、タイミングを計らっての合図に従って調子よく色紙に包んだ硬貨や札を舞台に投げ入れる。観客はむしろそれも観劇の一つの要素として楽しんでいるのだ。だから途中で投げ銭集めのタイムという時間もある。
 だが純粋に演劇として観た場合、解説調な台詞が多く、ドラマにリアリティがなく深みが感じられず、面白さも言葉のギャグが中心で表面的だ。
 演技もオーバー・アクションで如何にも土俗的な芸能風で、そういう楽しみかたも当然あるのだが、演劇としては物足りない。夏の夜の一刻を不思議な世界を経験する別世界として、こういう集団も存在価値があるのだなあと観客の皆さんたちを眺めているのだった。ちなみにこの3人は家族である。