演 目
ふすまとぐち
観劇日時/12.6.9. 14:00〜15:45
劇団名/野の上(青森)
上演形態/都道府2県ツアー
作・演出/山田百次 照明/納谷翔一郎 写真/田中流
記録/小口宏 相談役/赤刎千久子 制作/劇団 野の上
劇場名/札幌・琴似 コンカリーニョ

問題未解決のままの終幕

 青森のある新婚家庭のトモノリ(=山田百次)と桜子(=三上晴佳)。桜子は同居する義母・キヨ(=藤本一喜)の猛烈ないじめに対して、押し入れに閉じこもってふすまを締切り、ふすまを叩く以外の反応を一切拒否する。キヨの怒涛のような青森弁に対して夫のトモノリは何の反抗も出来ない。
トモノリの妹の幸子(=鳴海まりか)が、小学6年の小幸(=音喜多咲子)を連れて出戻って来る。幸子は夜の勤めをしながら桜子に肩入れするし、小幸は子どもながら空気を読むのが上手く祖母・キヨとも上手くやっている。
 そこへ親戚の子・幸太郎(=普通の大人だが役者名は不掲載)が、家庭の事情で一日の逗留に現れて一悶着を起こす。
 キヨは傍若無人で、怪しげな「早起きの会」なるものに狂信し、そこの沢目さん(=木村元香)と千久子さん(=赤刎千久子)が事ある毎に出入りする。
 という、ある家庭の嫁姑の葛藤が描かれる。だが、現実には在り得ないような極端な状況設定で、それは現実を誇張した象徴的表現なのだろうが、その在り得なさが滑稽であり何となく納得させられるようなリアルな描写でもある。
 特に小幸と幸太郎の二人の恍けた存在が面白い。子供たちの在り方が鍵になったり突破口になったりして重要な存在が感じられる。
最後に脳卒中でキヨは寝たきりになり病院生活になる。
 「早起きの会」に入会した桜子は入会挨拶で、「義母が離れて楽になった」と述べるが、フト自分の言葉に疑問を持つ。
 「早起きの会」は、それが会の存在だと強調するが、病床のキヨを想う桜子は、「?」のままに舞台は終わる。単なるハッピーエンドに終わらず、猛烈な津軽弁の狂想曲は問題未解決のままで幕を閉じたのだった。