DVD
The End of ALEPH
上演日/1988.10.21.〜30.
上映日/21.3.26. 19:00〜21:00
劇団名/劇団 デパートメントシアター・アレフ
脚本・演出/萬年俊明 舞台監督/小林加奈 
演出助手/たなかたまえ 美術/岡貞光
衣装/小夜女工房 音楽監督/富井昭次
上演劇場名/札幌市北15条西1丁目 百貨劇場
上映劇場名/札幌市豊平区澄川 ラグリグラ劇場
出演者/斉藤わこ・村松幹男・高橋あや・月居のり子・川野きょうこ・湯沢みすず・小林かん子・伊勢谷比佐子・金愛子・ほか

明るい終末

 現在の「Theater・ラグ・203」の前身ともいえ、1983年から1990年にかけて札幌の演劇シーンに衝撃を与え続けた伝説の劇団「アレフ」の最も愛された舞台といわれる作品の記録映像である。
 雑然とした舞台装置の中をエネルギッシュに飛び回る演技者たちが、猛烈なスピードで速射砲のように台詞を放つのは、かつてのアングラ芝居を彷彿とさせ、唐十郎の状況劇場まで思い出して何とも懐かしい感じで心が弾む。
 そしてダイアローグもお互いが客席を向いて会話したり、飛び出す壁さえもギャグに使ったりする。しかも古い録画技術は画面効果も悪く、構図も無法状態でますますアングラっぽく、逆に懐かしい。
 さて物語。基本は貧しい3畳間のボロ部屋に住むOL、彼女は今、会社の慰安会に出すリア王の芝居に全身全霊をかけて猛練習中である。
 そこへサンチョを連れた歴史学者のドンキホーテが畳をこじ上げて転がり込む。彼らは歴史を指し示す不思議な球体を探しているらしい。
 そこへ、こここそ自分の部屋だと主張する大金持ちの別の女性や、預かった給食費を無くした高校生の男女カップル、紫色の雨に濡れて放射能の被害を憂う別の女性、部屋の管理人まで巻き込んで、総勢8人が、この3畳間に住み込む。
 その大枠の中で、すべてが世界の終末に向かって明るく突き進んでいるようだ。具体的には何がどうなっているのか判然としない展開の中で2時間を猥雑に踊り狂う。
 僕は「アレフ」をまったく存じ上げないのだが、作者で演出の萬年俊明氏がその10年後に亡くなっているので、最初タイトルから感じたのは、この作品はもしかして自身の死を予感して、こういう作品を創ったのかなと思った。
 しかしこのラストシーンは、ドンキホーテとサンチョに囲まれたこの部屋の住人OLが3人で愛食した沢庵漬けに誓って新しい世界へ向かうという一種のハッピーエンドであったことに驚嘆した。
 そうなのだ、この物語は終焉と言いながら、実はこの猥雑な前向きなエネルギーこそが、この劇団の創造力なのだ。貴重な存在であったのだと思う。
 これが単なる郷愁ではなく、その意図や志を現在の「シアター・ラグ・203」が、どのように受け継いでいくのか、あるいはどのように批判的に表現していくのか、たとえ批判としても結局それは「アレフ」の遺産の変形的な継承と言えるのかもしれないのだが、ともあれどのような形で展開をしていくのか、楽しみに期待するのだ。