演 目
命を弄ぶ男ふたり
観劇日時/12.3.9. 20:00〜21:10
劇団名/演劇ユニット イレブン☆ナイン
公演形態/ジャパドラ参加 特別公演
作/岸田國士 演出/納谷真大 照明/上村範康
舞台協力/上田知 雑務/小島達子とイレブン☆ナインの若手
劇場名/札幌・中央区 シアターZOO

どっちつかずの中途半端な表現

 戯曲は未読だが、タイトルから多分自殺願望の話だろうと想像したらその通りだった。
 如何にも昭和初期らしい粋な和服の装いで登場する若いが高名な新劇役者(=江田由紀浩)は、誤解で婚約者を失った。
 化学者(=納谷真大)は研究中の実験事故で顔面の容貌を失い、やはり婚約者の思いを先取りして自らの抹殺を考える。
 その二人が偶然、自殺の名所であるこの鉄道踏切で出会ったのだが、二人はそれぞれ自分こそがと、自己抹殺の正当性を主張する。
 自分の正当性を主張するのならば、さっさと先に死ねば良いのに、故意なのか偶然なのか、二人は交代して死のうとしても中々死ねない。やっぱり彼らも死にたくないのが本心なのだろうと思わざるを得ない展開だ。むしろ、そのあたりをコミカルに誇張して演じる。
 その辺は納谷真大も江田由紀浩も、端正とオーバーとの際どい境目を危なげなく演じるのだが、それが本心なのか逃げの演技なのか、どっちつかずという逆効果になってしまったようだ。
 「命を弄ぶ」というタイトルをどう解釈するのか、自らが自分の意志で自分の命を弄んでしまったのか、自分の命を大事にしないことが結果として自分の命を弄ぶことになったのか。またはそれは同じことなのか?
 生きる意味をシリアスに問いかける戯曲だと思うから、端正に生真面目に描かれると思ったのに、古典的な戯曲を現代の一種軽薄な意識に迎合して合わせようとするように、無理にギャグ化しようとしてどっちつかずの中途半端な表現になってしまったような、しっくりとしない消化不良の舞台になってしまったようであった。