演 目
折り紙
観劇日時/12.3.7. 20:00〜21:05
劇団名/Theater・ラグ・203
上演回数/水曜劇場Vol 11 No310
作・演出/村松幹男 音楽/今井大蛇丸
音響オペ/湯沢美寿々 照明オペ/瀬戸睦代
宣伝美術/久保田さゆり
劇場名/札幌・豊平区・澄川 ラグリグラ劇場

意図的に造られた表現

 まだまだ寒い時期だから、狭い劇場の舞台と客席の境目あたりに大型の石油ストーブが真っ赤な炎を上げている。いつもだと開幕寸前にストーブの客席側が部厚い鉄製の囲い板で覆われて真っ赤な炎は見えなくなり暗転となる。
 ところが今夜は厳寒のためか、開幕したのにストーブは隠されず、真っ赤な炎は客席に照り返し、ゆらゆらと揺れる……それはまるでこの芝居の主人公・平野千恵美(=吉田志帆)の心情を象徴させるような暗い情念を感じさせる。
 平野千恵美の眼鏡も役作りと思うほどフィットして、話の成り行きが次々と辻褄が合って行き納得させる。そして平野千恵美を演じる吉田志帆のモノローグは作意的でメロディックな運びとなり、相手との対話になると普通の会話になるから、これも巧妙な役作りに思える。
 ただラストに近く、この舞台のクライマックスになる、弁護士の多田瞳(=田中玲枝)が平野を殺害する心理的な必然性が弱いのがやや気になる。
 動きのほとんどない心理的会話劇だけど、作り込まれた微細な演出・演技の展開に目を離せない魅力が強い。
 05年4月観劇の感想で、この芝居を昭和史に当てはめて、「天皇制狂信のナショナリスト(平野)に引きずり回されて自滅したリベラリスト(多田)が、実はナショナリストの崩壊を予感した」という僕自身の記述を再発見した。