演 目
サッポロ2012ショウケース
観劇日時/12.2.26. 全11作品各20分
主催/実行委員会 委員長/南参
実行委員/上田龍成・脇田唯・ミヤザキカヅヒサ・山本陽刃
舞台監督/上田知 照明/上村康範 音響/橋本一生
劇場名/札幌・琴似 コンカリーニョ

想いの行き違い

 札幌の中堅・新人劇団11集団が、短編演劇を並べて競作上演をした。観ている途中でフト思ったのが、今回の作品には「互いの想いがすれ違ってしまった」という設定が多いなあということだった。それが何を意味しているのかは今のところ分からない。だがきっと、そこには何かの見えざる意志のようなものが働いているのじゃないかと思っている。


第一グループは「トウホク・ホープ」と名付けられた「東北の今と未来を見つめていく」というコンセプトで上演の2作品。

■演目1  二人白虎 

劇団名/フクツマ
脚本・演出/南参 出演/南参・京極祐輔

 鶴が城落城の際、絶望で自害する隊士、生き残って再興を図ろうとする隊士、だが皮肉にも自害しようとした者が生き残り、生き残ろうとした隊士は死ぬ。
そして70年後、あの世で会った二人。史実をモチーフに生と死との意味を問うて東北大震災に重ねた佳品である。
 ちなみに「フクツマ」という集団名は二人の奥様が二人とも福島ご出身なので、それをもじったということであり、福島に対する暖かでユーモラスな思いが籠っている。

■演目2  はなして 

劇団名/三角フラスコ 
作・演出/生田恵 出演/瀧原弘子
照明/高橋亜希 音響/本儀拓 作品プロデュユース/森忠治

 一人の女が、その心情を訥々と語る一種の叙情詩か? 体の動きは華麗だが、退屈で独りよがりで劇としてはインパクトもなく面白くもない。
震災に対する鎮魂の意味があるのだろうが、それはあまり感じられない。








 第二グループは「ススキノ・ラフィン」と名付けて「人間のおかしさと笑いがつまった」というコンセプトの3作品。
 Laughin とは笑劇なのだが、「笑いのめして抗議する」(リーダーズ英和辞典)と言う意味もあるのだ、が果たして……

■演目3  笑っていいとも女友達 

劇団名/星くずロンリネス
脚本・演出・映像/上田龍成
出演/寺地ユイ・小石川慶祐

 極道にあこがれる女にTVバラエティ「笑っていいとも」の説明をする男。女はすべて自分の妄想で極道の話にすり替えて聞いている。
喫茶店での会話劇。彼女の妄想の映像がホリゾントのスクーリンに映し出される。
 何のこともないお笑いで、無理やりに合わせる機智は面白いけれどもそれだけの一瞬の無意味な快楽。そこに微かな存在感を求めるか?

■演目4  躯腋〜キミの唾 

劇団名/TBGS
脚本・演出/ミヤザキカヅヒサ 出演/高橋未和・八十嶋悠介

 「躯腋」という熟語はない。そもそも「腋」一語で意味は完結するのになぜ躯を付けたのか? そして唾、意味不明でペダントリックな匂いを強く感じる。
携帯電話と手紙のやりとりによる男女の行き違い。その手紙も二人とも自分の回りに円型を描いて並べて相似形を作るなど、恐らく自分勝手な思いこみ。
 肉体的な繋がりに強い想いを求める人間関係への憧れ?

■演目5  箱 

劇団名/エンプロ
脚本・演出/遠藤雷太 出演/三島祐樹・梅津学

 エレベーターに閉じこめられた二人の男。約束の時間に遅れそうで焦るサラリーマン。エレベーターの保守会社の技術者だと後で分かるもう一人の男。技術者はなぜか逃げ回る。実は仲間と籠絡して大金を持ち逃げする途中だったのだ。
 弱みを知って逆襲するサラリーマン。閉じ込められていたエレベーターの箱が動く。今度は逆に焦る技術者、だが止まった階には誰もいなかった。開き直って逃げる犯人、すべてを失ったサラリーマン。
 密閉された狭い空間、特に止まったエレベーターの中は条件が良いので、この設定は僕が最近観た舞台では、「シアター・ラグ・203」の『E・T』や、大阪のユニットで上演された『男亡者の泣きぬるところ』などがあるが、それらにも劣らない佳作であった。








「コトニ・ジャム」と名付けられた第三のグループは、「何が起こるか分からないジャムセッション」で3劇団の上演。

■演目6  プレプレイ 

劇団名/即興組合
出演/有田桐・岡田みちよ・ニコラス・山崎孝宏・
山田ともる・望月音次郎・川西敦子

 この劇団は観客からのタイトル・リクエストでまさに即興で演じる。今日のお題は「焼肉定食」であった。
話は、牛と人間のバトル。即興としてはうまく纏まったが、それがどうしたというバカ騒ぎだ。

■演目7  ひようりいつたい 

劇団名/イレブン☆ナイン×yhs
脚本/納谷真大 演出/南参
出演/小林エレキ・山下カーリー・櫻井保英・青木玖璃子・岡今日子・曽我夕子・水上佳奈

 オセロ好きな男女と老人。白を黒に黒を白にするのは人生と同じことか? 妊娠する彼女、子どもはピンク。これもよく分からないドタバタ喜劇か。

■演目8  即興セッション 

出演/深浦佑太・イシハラノリアキ・齊藤雅彰・氏家啓・脇田唯

 これは3日前に南参氏がタイトル『磯野家の災難』を設定して今日ほとんど即興で演じた、これもドタバタ笑劇。誘拐されたワカメ、助けにいくカツオ。演技者たちのバカ遊びで内容の空虚な遊びだ。








最後のグループは「オードーリ・アクト」と称された「これぞ演劇を感じさせる」と銘打った3劇団である。

■演目9  東京パラレルワールド 

劇団名/劇団アトリエ
脚本・演出/小佐部明広 
出演/有田哲・柴田知佳・伊達昌俊・小山佳祐・小池瑠莉

 5人の男女がそれぞれの思いを語るのだが、すべて行き違う。5人は座ったまま、様々な人物に入れ替わって演じる。
だからほとんど動きのない会話劇だが、これも想いの行き違いか。

■演目10  Ningyo-hime 

劇団名/欠陥工事
脚本・演出/ビルタテル
出演/井上嵩之・松浦薫・斉藤詩帆・ビルタテル・松浦弘忠・松本和馬・大竹里奈・須藤健太

 叶わぬ世界の人に恋をした女の話らしい。綺麗に作って大勢でお祭り仕立てで大騒ぎをするのだが、自己満足気味の他愛ない舞台だ。

■演目11  僕らのレコード 

劇団名/Drei bananen
作/かとうしゅや 演出/重堂元樹
出演/重堂元樹・かとうしゅうや

 20年以上も前に仲良かった3人のうちの一人が居なくなって何年かが経つ。
一人は喫茶店を営んでいる。ある日その居なくなった男からメモリィが届いた。
そこに記録されている音楽とは? 虚々実々の残った二人の思い出と現在の想い……
このコンビ、『枕のしたのしたの』が面白かったので期待したのだが……
    
   ☆

 短編演劇を単にズラーと並べただけのような無責任な感じがする。それぞれのグループの意図も後付けでしかないようだ。
 あらかじめ、ある目標を持って創ったものではなく、集まった作品を何となく区分けしたような安易な印象が否めない。