演 目
ふたつの空
観劇日時/12.2.19. 14:00〜16:00 (途中休憩15分)
劇団名/拓大ミュージカル実行委員会
公演回数/第28回
総監督・音楽監督・脚本・作曲/教授・土門裕之
制作全体指導/客員教授・福沢良一
演出/准教授・山田克己 舞台美術監督/教授・小西修一
衣装・メイク/助教・淀野順子 演技指導/講師・前田順二
衣装・メイク・ダンス指導/講師・藤井綾子
事務局/教授・勝谷友一 准教授・岡健吾 助教・保坂和貴
歌唱指導/講師・山本徹浄 照明プラン・照明/河野哲男 
音響プラン・音響/富田雅之・齋藤力
舞台美術/菊地清太・堀川一美
学生スタッフ/総務・10名 渉外広報・11名 
音響/3名 舞台監督/4名 大道具・小道具/34名
衣装・メイク/7名
キャスト/40名 演奏・ウィンドアンサンブル/9名
劇場名/深川市 文化交流ホール「み☆らい」

28回目の蓄積が見えた

 深川市にある拓殖大学北海道短期大学には環境農学科と保育科とがある。この大学では毎年1回、学生たちがミユージカルを上演しているが、今年は第28回を迎えた。
 当初は保育科の実習に近いものでなかなか周囲の承認を得られないような雰囲気であったらしいが、それでもめげずに営々と努力を重ねてきた。
 僕はその公演のここ10年ほどは地元であるというだけで、ほとんどの上演を観てきた。だがその感想は、物語に問題があるという1点だけであった。その理由は安易で問題意識の小さい平板な物語でしかなかったからだ。
 その点をもっと追究すると、特にこの物語に当事者の学生たちが、どれほど関与しているのか? という疑問である。若者らしい韜晦というか逡巡が無いのだ。単純に一直線に素朴に話が進む浅さに対する疑問だった。
 今年の物語は、自然界と人間界を「二つの空」として対比させて、そこで人間は何を考えるべきなのか? とでも思えるもので、今までになくスケールが大きく問題意識が強い。そして無駄なエピソードやシーンも少なく、しっかりとした展開だ。
 ただ相変わらず気になるのは、この筋立てと展開の仕方に学生たちが、どんな風に関わっていたのかというところだ。
 今までは、何も考えずに出来上がった脚本に唯々諾々と従ったような雰囲気が感じられたのだが、今回は創っている学生たちの意識を感じることが出来たのが大きかった。
そしてやっと見えてきたのは、装置・演出・演技・音楽・ダンスすべてのレベルが高いと評価できる舞台だったのだ。
 やっと営々28年掛って積み上げた経験が花開いたと言うことが出来る。ただ一つ言うべきかなと思うのは、話の細部に大雑把な表現が見える部分があることだ。例えば商店街の在り方が観念的であり、誇張や象徴的な表現は必要だけど嘘っぽくなっていやしないかと気になるのだ。もっと本質を抉る表現が欲しかったのだ。お伽噺であっても童話的物語であっても、嘘が感じられると訴求力が弱くなる。
 音楽では、とくに特別編成のバンドが良い。おそらくこれはこの舞台だけに特別に編成されたものではなく、日常的に営まれている集団なのであろうと察せられる。彼らがもっと活躍する場面を観たかったと思う。
 ともかく地元に根付いて、2ステージ千5百人の観客を集めた拓大ミユージカルの成長を喜びたい。