演 目
マクベス
観劇日時/12.1.22. 14:00〜16:00
劇団名/北翔大学・同短期大学部 北翔舞台芸術
公演回数/定期公演VOL.14
作/ウィリアム・スェイクスピア
訳/小田島雄志 演出/村松幹男
舞台監督/宮下芳子 照明/今井翔太 音響/東亜美・五十嵐輝信 装置美術・小道具/大関莉奈
衣装・メイク/宝来宏実・小倉加奈未 制作/阿部弥生・田中伶奈
劇場名/北方圏学術情報センター ポルトホール

エネルギッシュだが幼い表現力

 演劇を学ぶ学生の、いわば中間テストのような、学習のその時点での整理とでもいうような舞台だと思うのだが、入場料があって一般公開されている以上は、一つの舞台作品として観なければならない。
 開幕前は緞帳なり暗転幕などで舞台を隔てておくのは、これから始まる劇の世界と観客のいる現実世界とを区別して対比させるという意図を感じるが、最初から舞台装置を見せるのは、一種の予告編と言うかこれから始まる劇世界を象徴させている意図が感じられる。
 そういう意味で開演前に見える暗くどんよりとした今日の舞台は、奥行きの深い重厚な造りの城郭の一部を表すような装置といい、湧き出る雲のような陰惨な雰囲気をイメージさせるスモークといい、まさに、これから始まるマクベスの世界を象徴させて期待が高まる。
 だが開幕、3人の魔女が出てちょっとびっくりした。イメージとまったく合わないギャル風の台詞だったからだ。もちろん台詞の内容に変更はないと思われるのだが、その声、発声がいかにもガキっぽいのだ。
最初、それは世界を客観視する演出意図かとも思ったのだが、それにしてはメーキャップが妖怪じみているので、それも意図の中なのか? と混乱する。
 やがて始まる欲望と猜疑と殺戮のドラマは、大勢の登場人物が皆な同じような学生たちであり区別がつきにくい上に、全員同じようなスピード感の強い発声ために、話の展開が分かりにくく肝心のドラマが上滑りになって充実感が薄い。
 簡素で統一感のある衣装が印象的だったのと、若さに任せたスピード感は心地良いのだが、マクベスと彼を取り巻く人々の、人間としての根本的な悲劇を表現する舞台としては物足りなさ過ぎた。
さらに疑問なのは、女性が男役を演じることだ。これは前回もあったのだが、単純に男優が足りないので女性が男役を演じているのかと思われるし、今回は女役が少ないので男役を演じる女優が多くなるのも必然かもしれない。そして俳優は性別に関係がなく人間を創造するのが仕事だから女優が男役を演じるのも当然かもしれない。
 問題は、その辺の自覚が曖昧にしか感じられないことだ。たとえば宝塚歌劇とか歌舞伎の女形とかでの表現のポリシーが、ここでは感じられなく、単に便宜上で演じているようにしか見えないことだ。
 さて今日の舞台の全体が、どこまでが学生たちの意識的な表現なのかは分からないのだが、古典を演じる場合、原作の持つエッセンスをそのまま表現するのか、別の観点から見直すのかが問われる。
 今日の舞台はおそらく学生の演劇学習の中間報告という性格なのだろうと思われるが、舞台作品としては中途半端な出来であった。
 なおfacultyとして各スタッフには、札幌在住のプロ技術者たちが名を連ねている。その人たちがこの舞台にどこまで関わっているのかも関心のあるところだ。
 出演者。田崎康平・國廣真実・進知樹・野田頭希・菊池優太・尾谷拓哉・小川勇介・鹿内康平・兼子里美・山口健斗・高野沙綾・坂本麻未・神埼麻梨香・信山紘希・山崎亜里紗・田中伶奈・荒木美意子・柿下華子・丸川由希・森本早貴・勝俣美咲・滝田千穂・中西大樹・市川篤・桑名勇輝・川口岳人・伊藤茉緒・金美沙子・阿部弥生。
 出演者の一覧表を書き出して見ると、川口岳人・信山E紘希・山崎亜里沙などなど、その他にも僕の知らない方も居るかも知れないが、この北翔舞台芸術のメンバーの中には、一般の舞台で盛んに活躍している演劇人たちがたくさんいるのを確認して、今さらながら驚くのだ。