演 目
十年希望
観劇日時/12.1.11. 19:00〜21:00
劇団名/Nana Produce
脚本/前田万吉 演出/浜谷康幸 舞台監督/吉川尚志
音響/平田忠範 照明/青木大輔  宣伝美術/佐野幸人
プロデューサー/田崎那奈
劇場名/東京・中野 劇場HOPE

様々な人生模様

 ある大学の軟式野球部を卒業した同級生8人が毎年、会って1年の総括と翌年の展望を語り合う会を開くことを決める。よくある話で若々しい気分の感度は良い。
 年数が経つうちに、だんだん格差が露われてくる。映画製作に意欲を持って金を貯めて居る奴、父親が突然亡くなって零細企業の社長を継いだ奴、小説家の夢が捨てきれず貴金属商を営みながら修業している女、フアッションデザイナーとして着々成功の道を歩む女、父の電気工事業を手伝う奴、この二人は結婚したが間もなく離婚する。就職が出来ず同級生の社長の会社に入れて貰うが莫大な借金を作って困ってる奴、そして怪しげな詐欺商売に手を出して、同級生が映画製作のために貯めた金を詐取した上に彼を自殺に追い込んだ奴、IT企業のやり手として実績を挙げ幸せな結婚をして子どもが生まれた奴。
 人生模様の様々……よくある話だが、物語の展開にリアリティがあり表現方法も素直だから、気持ちよく観ていられる。
 最後の年、拘置所を出た詐欺男が、電気工事で独立した男とIT企業の2人だけになった今年の会へやって来る。詐欺男は電気工事の男と乱闘になりそうになるが、IT企業の男はこれから毎年、映画男の墓参りをすることが贖罪だと言う。
 一方、仕事が忙しくてなかなか出席の出来なかった社長が来て雇った同級生が仕事も出来ずに莫大な借金を作って困っていると絶叫する。IT男は自分のへそくりから幾ばくかの金を貸すつもりになる。そこへ、フランスへ文学修業に出た女が、映画男の唯一のシナリオを小説化した本を送ってくる。そのタイトルが『十年希望』だった。
 様々な人生が一つの曲がり角に来たようだ。当初に計画した、10年連続で語り合う明るい未来のDVDは出来そうもなく、予想外の寂しい結末を迎えたようであった。