演目 海霧
観劇日時/11.12.14. 13:30〜14:40(休憩)14:55〜16:10
劇団名/劇団民芸
原作/原田康子 脚本/小池倫代 演出/丹野郁弓
装置/勝野英雄 照明/前田照夫 音楽/池辺晋一郎
衣装/緒方規矩子 効果/岩田直行
劇場名/旭川市民文化会館 大ホール


明治の女の一生
 明治8年、佐賀から釧路へ新天地を求めて移住してきた平出幸吉(=伊藤
孝雄)と妻・さよ(=樫山文枝)の物語。というかほとんどが さよ の物語
である。
 雑貨商を営み隆盛を極め、二人の娘を授かったが、長女(=中地美佐子)
は女の子の孫・千鶴(=中地美佐子の二役)を残し若くして亡くなった。
 そして夫の死後も長女の婿(=みやざこ夏穂)との確執の中、長女の身代
わりの孫娘を育てるが、家業を任せた次女(=桜井明美)の婿(=齊藤尊史)
が破産する。
 東京女子大学に通う千鶴のために建てた東京・中野の別宅で悲報を聞いた
さよ は、老いの身で子供を連れた千鶴とその夫(=神敏将)を伴い故郷の
釧路へと戻って来る。
 釧路には、かつての忠実な下僕で今は牧場を経営するアイヌ人のモンヌカ
ル(=境賢一)とその妻・たき(=大越弥生)が濃い海霧の中を出迎えてい
た。
 彼女の一生は、釧路の海の象徴である海霧と共に生きた一生であり、海霧
は彼女の生きてきた象徴でもあったようだ。
 明治8年から昭和4年の釧路へ帰還までの約56年間、第一次世界大戦とち
ょうど東京時代に遭遇した関東大震災という歴史を背景に、一人の女性の絶
頂から苦難と没落の歴史を描いた一種の大河物語だ。
 事実を基本にしているので物語にはリアリテイがあり、予定調和だとは思
っていても素直に感情移入ができる。演劇の大きな力を感じる。
 長女・千鶴の性格描写が、ちょっと極端すぎるような気もするが、他の部
分の描写に嘘が無いので納得させられる強みを持っている。