演目 ングッ!!
観劇日時/11.12.7. 20:00〜21:20
劇団名/シアター・ラグ・203
公演回数/ウエンズディ・シアターVol.21
作・演出/村松幹男 音楽/今井大蛇丸
音響オペ/田中玲枝 照明オペ/瀬戸睦代
宣伝美術/久保田さゆり
劇場名/札幌・豊平区・澄川 ラグリグラ劇場


二つの物語
 この舞台何度も観ているのだが、その都度何か違った印象を受ける。その
理由を考えてみた。こういう構成というか話の展開というのは別に特に珍し
いわけじゃない。
 まず、環境の全く違ったアラフォーの女性三人(=柳真海/吉田志帆・真
中友美/久保田さゆり・大友厚子/斉藤わこ)の固い友情と、その中の一人
である柳真海の再生の物語は、一種の現代劇として分かり易く楽しい展開だ
が、そこだけみれば単純な風俗劇だ。
 だが、この話は単にそれだけではない。ここに関わる「闖入者」(=村松
幹男)の存在が基本の物語に溶け込まない、つまり次元の異なる存在なのに、
不思議に溶け込んでいるように思えるのだ。そこのところが実に巧妙に描か
れているのだが……
 最初のころは、それにとても違和感があったのだが、あんまり論理的に考
えないで、単にお互いの妄想か潜在意識の交錯した表現かと思ってしまえば
納得がいく。そしてそれからは、ラストに近くこの闖入者が柳真海に対峙し
て語り合う、生死感や幸福論の問答に焦点が強くなっていくような感じがす
る。
 これも単にこれだけ取り出すと単純な教訓になるのだが、この二つが微妙
に絡み合って展開するところが、演劇として巧妙に構成されているのが魅力
なのだと思った。
 だからこの舞台は何度も観ることによって、面白さが増す類の芝居だと思
われる。
      ☆
 今回、以前から気になっていた、いわゆる客いじりについて村松さんに聞
いてみた。この芝居でもこの闖入者が想いの籠った頑丈な金属製の箱を客に
預かってもらおうとするシーンがある。僕は基本的に客いじりには反対だ。
そこだけ浮き上がって芝居が壊れるからだ。村松さんの最初の答えは「舞台
と客席との融合感、客は舞台を別世界として客観視しないで、自分の現実の
一端として感じて欲しい」というものだった。
 しかし、そうであるなら、相手は別に本物の客でなくてもいいのではない
のか?というのが僕の考えだ。舞台と客席との一体感というのならば別に本
物の客でなくて役者を仕込んでおいてもいいわけだ。いじられた仕込み客は
他の本物の客から見れば、本物の客であるのか仕込まれた役者であるのかの
区別はつかないと思う。もちろん、その仕込まれた役者を知っている客には
分かるかも知れないが……
 そう申し上げると村松さんはやや考えて、「予定調和を壊す仕掛けである」
と答えられた。なるほど、それならば納得がいく。そもそも僕は「予定調和
の劇」が好きになれない。
 だがこの客いじりが本当に予定調和を壊すほどの力を持てるのであろうか?
という新たな疑問が出てきた。