演目 霜月小夜曲
観劇日時/11.12.3. 18:00〜20:00
劇団名/劇団TPS
公演回数/第32回
作・演出・音楽/斉藤歩 舞台スタッフ/TPS劇団員
宣伝美術/若林瑞沙 制作/阿部雅子・横山勝俊
ディレクター/斉藤歩 プロデューサー/平田修二
協力/工藤ローラ・石川亨信
劇場名/シアターZOO


割り切れない三様の人生
 まず一番驚いたことを紹介する。中年の三人の女が高校卒業後20年ぶりに
再開する物語なのだが、その高校時代を回想する場面に使われる人形だ。
 卒業した高校のあった名寄市智恵文地区に残ったユキ(=吉田直子)を訪
ねてきた転勤の多い教員・ムツミ(=宮田圭子)が泊まったホテルで追想し
ていると、ホテルの窓のカーテンが開かれて、高校時代の三人が学校祭で演
じた三人姉妹の一場面が人形で演じられるのだが、それは三人の俳優が自分
の顔で現れ、首から下が人形、両手は棒遣いで足は足遣いの役者が使うとい
う前代未聞の人形劇なのだ。
 当然、本人である宮田圭子は一瞬に袖幕から引っ込み、次の瞬間、黒子姿
で自分の首に胴体の人形を吊るして両手を棒遣いで参加する。
 この方式の人形劇は初めて観たし、そのインパクトは非常に大きかった。
ただ、それがこの芝居の内容とどう関わっているのかは分からない。ともか
く冒頭でこの人形劇に圧倒されたのは事実だ。
 あとで聞くと、タイトルは失念したがあるアメリカ映画で回想場面に胴体
から下部をアニメーションにした表現からヒントを得たそうであった。なに
しろこれは異常な傑作であったのだ。
 さて物語、この二人にちょっと胡散臭いメキシコ暮らしのセツコ(=林千
賀子)を含めた三人の再会の成り行きだ。発端はセツコが二人に呼びかけて
ユキが現在暮らしているこの地に集まったのだが、何かだんだん動機が不審
がられる。セツコは調子のいい黒人の共同事業者・カルロス(=鎌内聡)を
連れてきているのだが何か隠しているようでもある。
 過去のユキとセツコやムツミたちの同級生・タクヤ(=遺影写真のみ/佐
藤健一)との確執が現れてきて、ムツミを巻き込んだ壮絶な暴き争いが始ま
る。
 最後は、セツコの善意がすべてを包み込んでハッピーエンドになるのだが、
これが事実だとは思われない。無理に収めたような感じが強い。
 セツコは懺悔したかったのかもしれないが、むしろ確執は持ち越されたと
感じさせられた方が現実的だと思うのは捻くれた思いであろうか?
 あまりすっきりとした終わり方ではなく、ユキの単純さが哀れでもあり、
セツコのあっけらかんとした強かさと、ムツミの割り切れなさが、それぞれ
の一つずつの人生かなとさえ思われた。
 家族と隣家の人たち。ユキの息子・ケースケ(=佐藤健一)、娘・ミナ
(=齋藤由衣)、隣家の息子・シロー(=木村洋次)、その妻・アツコ
(=山本菜穂)シローの妹・マキ(=高子未来)、農協の人(=茂木聡)。