演目 ジャックと豆の木
観劇日時11.11.12. 11:00〜12:00
劇団名/人形劇団・ぽっけ&ばおばぶ&ボクラ
演出/舛井正博 脚本/河合喜美子 原話/イギリス民話
美術/伊吹英孝 照明/伊藤勝敏 音楽/Yukii 
美術スタッフ/チームKOBITO
出演/人形劇団 「ぽっけ」・「ばおばぶ」・「ボクラ」
劇場名/札幌・東区 やまびこ座


人形劇の幅広い表現力
 ジャックと豆の木の話は知っているようで意外と知らない。僕もこれを観
て初めて、その長い話の展開を知ったのだ。
 悪魔によって父を亡くした男の子が、無謀ともいえる冒険の末に幸せを得
るという話だった。そこには守り神が見守って助けるのだが……
 とても驚いたのは表現の多彩さだ。プロローグで両親と幼いジャックとの
家庭から父親が悪魔に亡き者にされるシーンは、柄付きの大型の団扇のよう
な物に半透明の紙が貼ってあり、そこに人物が華麗に描かれ後ろから懐中電
灯で照らして空中に浮きだしたように現わされる。その影絵式の大型団扇が
何ともユニークな表現だ。
 あとはほとんどグレー系統に統一されたユニホームの人形遣いたちが、出
遣いで操る30センチ前後の人形なのだが、吊り下げ式の牛の人形は胴体と頭
が独立していて、時に応じて別々にユーモラスに動く。
 雲の上に出た時は、舞台一杯の雲色の布を6人掛りで揺らして雲を見せる。
水とか霧とかこれは普通の演劇、特に伝統演劇の舞台では良くある手法では
あるが、この布は所々に切れ目があって、そこから人形が出入りする。
 大男は握り拳と足首だけで表現する。四肢の末端だけをそれぞれ4人の人
形遣いが操るわけで、胴体と頭は観客の想像だけなのだが、相手の正体がは
っきりと見えないということで、これが意外と怖い。
 大男の妻である女が、本心をむき出しにした時に彼女の顔面は、文楽のガ
ブと言われる技術を使って、一瞬にして鬼女の奇怪で怖い容貌に変化する。
 棒遣いの人形たちは地面から浮いて居るのだが、それも含めてすべての人
形たちは、思ったより微妙でリアルな表現を演じるのだ。
 つまり全編を通して、人形劇の既成概念を吹き飛ばしたような豪快で巨大
で、しかも人形劇独特の繊細な舞台表現を魅せてくれた事に驚いたのだ。
 人形劇とは現実の人間では絶対に出来ない行動が出来て、それが人間の深
い心情を表現するのに生身の人間以上に誇張して表現できることに最大の利
点がある。
 この舞台はそれらの様々な利点を生かして精力的に魅力的な舞台を創った。
既成の教訓劇ではなく、新しい戯曲でこの素晴らしい技術力を観たいと思う。