演目 少女仮面
観劇日時/11,10.30. 15:00〜16:30
劇団名/風蝕異人街
作/唐十郎 演出・照明・音響・美術/こしばきこう
劇場名/札幌・中央区 アトリエ阿呆船


戦後社会の縮図
 1940年のころ、宝塚歌劇団のトップスター・春日野八千代(=三木美
智代)は、慰問巡演先の満州で急病に侵され入院した現地の病院で、当時の
人気軍人・甘粕大尉(=李ゆうか)の見舞いを受けて親しくなった。
 昭和24年の東京は戦後の復興に沸き立っていたのだが、春日野は地下の喫
茶店「肉体」を経営し、未完成に終わった己の肉体に拘って様々な妄想を逞
しく抱いていた。
 この喫茶店の全権を持つ主任ボーイ(=遠山達也)は、女装のボーイ(=
三浦千絵)をこき使い、暴力バーのような運営であり、居所を探してここへ
通う腹話術師(=平澤朋美)と、その人形(=富樫真衣)は、二人の関係が
逆転してくる。
 春日野を憧れて祖母(=山谷義孝)を連れて入り浸る少女・貝(=丹羽希
恵)は、何百万人という少女が殺到するここでは貝の希望などとうてい無駄
だという主任の言葉にもめげず入り浸り、ついに春日野の愛を得て、舞台
「嵐が丘」の相手役の練習台になる。
 断っても断っても店頭の水道栓の水を飲みにくるボロ服の男(=田村嘉規)
は、戦後の日本の象徴だ。
 精神の愛と肉体の愛との強烈な確執の物語であると同時に、この唐戯曲は、
唐としては社会性の濃厚なメタフアの解りやすい物語であり、それを巧く捉
えて舞台化したのは現代性がある「風蝕異人街」らしい舞台だ。
 ただ惜しむらくはダンスがちゃちい。舞台が狭いということもあるのかも
しれないが、こしばのいうリビドー(性的本能)があまりにもなさ過ぎる。
 その他、看護婦として丸山アキナと岡谷友美が出演。