演目 このつぎなあに
観劇日時/11.10.30. 11:00〜12:00
劇団名/ブランコ
原作/山中恒 脚本・演出・美術/寺尾邦宏
劇場名/札幌・中島公園内 こぐま座


昔懐かしい人形劇
 前半30分は、寺尾邦宏による小学1年生のガキ・キャラクター「あっチャ
ン」との掛け合いの腹話術。挨拶や交通安全などの話題で繋ぐこれこそまさ
に古典的腹話術。小学低学年の観客は大喜びで付いてきて、ほとんど同数以
上の父母は安心して頬笑ましくリラックスしている風景は、いつの時代も共
通する良い雰囲気である。
 そして次は「このつぎなあに」。懐かしい感じのする古い形式の人形劇。
最近の人形劇は、大きな出遣いが主流になっているので、この額縁を組んだ
舞台で片手遣いの人形を操る形は逆に珍しいのだという。
 だけど僕自身はこの形が好きだ。というかこれこそ人形劇の原点だと思う
のだ。出遣いが悪い訳じゃないけど、この額縁の中の片手の人形に強い郷愁
を持ち、それが今の幼い子供たちに素直に受け入れられることが大きな感慨
をもたらすのだ。
 思ったより細部に心遣いが及んでいて違和感が少ないのが、とても進歩し
たと思わせる。
 話は単純だ。田舎暮らしができなくなった息子は都会に出稼ぎにでる。残
った老父は寂しい一人暮らしの夜々に狸が慰めに来る。狸は大入道や大蛇・
赤鬼などに化けて来るのだが、簡単に見破られ逆に遊ばれる。
 やがて息子は財をなし、老父を迎えに来る。老父は長い間、慰めてくれた
狸にお礼を残して息子と都会に去る。
 これは50年も前に書かれた物語だが、今もリアリティを失わない。だから
昔話でありながら表現はリアルなのかも知れない。
 幼い子供たちには少し難しいのかも知れないが、30分の長丁場を飽きずに
観ていたのが印象的。
 あえて気になったところを挙げると、演出の思いこみが浮いた箇所を幾つ
か……
 音響効果が雑だということ。たとえば、化けた狸が戸を叩く音が鋭すぎて
大きすぎる。化け物が驚かすという意図なのだろうが、逆効果。ここはホロ
ホロと聞かせたい。
 同じように鳥やセミなどの音の背景の雑音が気になる。さらに狸の台詞が
録音なのは、おそらく現実から切り離したいという思いがあったのだろうが、
暖かみを殺ぐ。ここはやはり生の人間の声でありたかった。