演目 アントンとチェーホフの桜の園
観劇日時/11.10.1. 14:00〜15:30
劇団名/開幕ペナントレース
上演形態/札幌公演実行委員会
作・演出/村井雄
劇場名/BLOCH

分からなくて面白くない
 「面白いけどわからない」と「わからないけど面白い」との質は全く違う。
その上で「わからないから面白い」ということをいつも考えている。
 と、主宰者で演出・役者の村井雄は言っている。確かにその意気は壮とす
る。だが実際に表現された舞台は正直いって面白くはない。この舞台が面白
くないならば、面白いことを前提とした村井のこの定義は破綻する。
 では、どういう風に面白くないのか?この舞台にあらわれる登場人物たち
の不自然で不思議なダンスが醸し出すエネルギッシュな雰囲気がたぶん魅力
の根元なのであろう。
 ところが、このダンス風の演技は、いかにも計算された動きで意外性がな
い。だから整然としていて、つまり退屈するのだ。確かにきれいだが、それ
だけのものだ。
 しかも肉体的に鍛え上げられた効果がみえない。例えば片足で長い間、立
っていると震えがきたり、倒立ができなかったり、もっともこの倒立不成功
はギャグに使ってそれは唯一成功したギャグだったけれども……
 僕はどんな意味のない分からないと言われる舞台にも執拗に意味というか
物語を求める。それが物語原理主義者としての僕の立場であり、僕の存在理
由だからだ。
 だからこの舞台にも一所懸命に物語か、せめてテーマを捜すのだ。
 おそらくテーマがないのがテーマだろうか? だがそれでは納得できない。
ナンセンスにはナンセンスというテーマが有るべきだ。その意味では中途半
端な成果なのだ。
 物語は有るようで分からない。ラストへきて何か漂流のはての希望の象徴
みたいなシーンが見えたような気がしたのだが……
 もう一つ気になったことを書くと、札幌公演の実行委員長の米沢春花氏が
フライヤーに書いた文章の中に「圧倒的な演劇観」とか「唯一無二の演劇観
を持つ集団」とか紹介しているけれども、肝心のその演劇観の内容が一切書
かれていない。
 その情熱は大きく評価するけれども、肝心なのはその米沢さんの「演劇観」
の中身だと思うのです。これだけでは、その情熱は感じられても、なぜ米沢
さんが、この集団に魅せられたのかが分からない。
 実は僕も前回の『ロメオ&ジリエット』を観て消化不良を起こし、再観し
たんだけども、逆に得るものの少なさに期待を失ったのだった。