演目 ハッピィ・ジャニー
観劇日時/11.9.18.
劇団名/フライイングステージ
作・演出/関根信一 照明/伊藤馨 照明オペ/横佩彩
音響/樋口亜弓 衣装/石関準 
フライヤー原画/ぢるぢる フライヤーデザイン/石原燃
制作/渡辺智也・三枝黎・水月アキラ
劇場名/シアターZOO

ゲイの現実と老後の生き方
 母親とゲイの息子との話である。東京に住む母親(=石関準)は自分の大事
な一人息子(=羽矢瀬智之)がゲイであることが納得できず、息子も何か後ろ
めたい気持ちが避けられない。
 母親は自分の母親(=ますだいっこう)の法事に、一人で札幌へ行こうと思
っているが、息子は勝手に一緒に行こうと思っている。だが一方、息子は同棲
している彼氏(=小林高朗)を扱いかねている。
 そんな軋轢や不理解の中で、母親と、男と同棲中の彼と、偶然巻き込んだ元
・彼(=岸本啓孝)との4人での東京から札幌までの珍道中が始まる。
 この道中記は、この芝居のエンターテインメントの中心でネタバレになるの
で具体的には描写出来ないが、一般的なドタバタ喜劇として風俗劇の面白さを
保っている。
 この芝居の面白さとテーマには二つあって、その一つは当然、ゲイの人たち
のマイナーじゃない存在の正当な主張だ。そしてそれを声高に言うのではなく、
こういう芝居の展開の中で一種の風俗劇の趣でそれとなく表現した功績であろ
う。
 そして僕が感じたもう一つの大きな印象は、独居老人の生き方の問題だと思
う。
 今日の芝居も、僕はむしろお互いに思い合っていながら遠慮せざるを得ない
母親と息子の、そして母親とその母親との遠慮せざるを得ない関係にこそ切実
な老後の現実を痛感したのだ。
 その他の出演者。しいたけお・遠藤祐生・木村都美・関根信一。
 さらに特筆すべきは、木村都美という女優が女性を演じる以外は、女役もす
べてゲイの男優が演じていることだ。この劇団はゲイをカミングアウトした男
たちの劇団なのだ。