演目 やさしいあくま
観劇日時/11.9.17.
劇団名/えるむの森
原作/なかむらみつる 脚本・演出/杉本明美
舞台監督/今野史尚 照明/小山そのみ 
音響協力/西野輝明 転換/チャンズ 制作/杉本瑠美
振付/榎本玲子 道具/遠山洋魅 衣装/滝口真寿美 
記録/山田和子 音響オペレーター/沼本美和
劇場名/新札幌 サンピアザ劇場

『泣いた赤鬼』変奏曲
 人から怖れられている悪魔の子供・チュッチュ(=榎本玲子)、そしてたっ
た一人の肉親である祖母(=Wで遠山洋魅・桃野勁子)の不治の病を疎んじら
れて世間から除け者になっている一人の少女・フウ(=杉本明美)。
 この二人の友情物語は、前作の『あらしのよるに』と類似した一種の相反す
る者同士の繋がりの物語である。
 そしてそこには人間の心の奥底に眠っている善意の目覚めに対する共感と感
動がある。
 『やさしいあくま』というこの話は初めて知ったのだが、なんと、かの浜田
広介の昭和の名作童話『泣いた赤鬼』にそっくりなのだ。
 『泣いた赤鬼』は、村の人たちと友好関係を作りたい赤鬼の望みを聞いた友
人の青鬼が、わざと衆人環視の中で乱暴を働き、それを納めた赤鬼がめでたく
村人たちと友好関係を築くのだが、青鬼は赤鬼から遠去からなければならない
という悲劇だ。
 もっとも青鬼の役柄が赤い悪魔になっていて、青と赤が逆になっているけれ
ども……
 『あらしのよるに』といい、この『やさしいあくま』といい、こういう話を
選ぶ『えるむの森』は、その想いの方向がとても良く、はっきりと分かる集団
である。
 だが、演技はもちろん、舞台装置や衣装などがいかにもわざとらしい。幻想
物語であるにしても、もっと基本的なリアリティが必要だと思われる。そうで
ないといつまでも絵空事として飽きられる可能性が強く案じられる。
 でもいつか、『泣いた赤鬼』をこの『やさしいあくま』の別バージョンとし
て演じてもらえたら面白いなと思う。
 その他の出演者。近川富美・滝口真寿美・杉本瑠美・仲野悦子・原田星子・
                 浅利美樹子