観劇日時/11.9.3.
主催/インデペンデントシアター プロデュース
舞台監督/小野かっこ 総合照明プラン/溝渕功
総合音響プラン/須川忠俊 デザイン映像/TM
宣伝・記録写真/古川仁 票券管理/安部祥子
制作/笠原希 地域プロデューサー/小室明子
総合プロデューサー/相内田唯史
劇場名/札幌・コンカリーニョ
インデペンデントシアターが主催して、5年間に上演された60作品の中から
厳選した札幌の1作品を含めた4作品に、札幌予選出品の2作品を含めた合計
6作品を一挙上演する。
条件は上演時間30分の一人芝居である。連続して上演するために舞台の転換
時間は搬入・搬出を含めて約3分、ほとんど装置らしいものはない。
まずその6作品を観劇順に紹介して、その中から何が読み取れるのか検証し
てみることにする。
演目1 0141≒3088
札幌=脚本・演出/イトウワカナ 出演/榮田佳子
複数の男たちの元を訪ねながら、その部屋で次々に食べまくる。男に対する
欲求不満が食欲に振り替わったような行為だが、何と実際に本物の食事をする
のだ。
それだけを観ていると、まるでフードフアイターのような感じもする。とい
うことは逆にフードフアイターと称する人物には何か振り返るべき欲求不満が
あるのかなと、変なことまで考えてしまった。
演目2 3
札幌=脚本・演出/亀井健 出演/赤羽祥次郎
混濁した意識の中で記憶の迷路に身体で立ち向かおうとする男の話。
これは僕の一人芝居の分類では@であり、自分の個人的な想いや心境だけを
訴え続けるだけなので、劇の基本である他人との葛藤を進行形で表現されてい
ないという基本的な欠陥があると思われる。
演目3 スクラップ・ベイビィ!
大阪=脚本・演出/坂本見花 出演/Sun!!
双子のようで性格が正反対の女の子の孤児。街頭で物語を演じての生活。古
新聞から言葉と社会を学びながら、一人はもう一人から反発を受けながら成長
する。
これは僕の一人芝居の分類、そのBであり、一人の役者が複数の役を演じて
劇的葛藤の現場を表現する。
演目4 いまさらキスシーン
東京=脚本・演出/中屋敷法仁 出演/玉置玲央
優秀な成績の勉学と部活の長距離走に賭ける青春。彼女が先輩に恋をした。
勉強・部活・恋のそれぞれに全力疾走するうちに瞬く間に高校の3年間は過ぎ
る。
肉体を駆使して演じる男優の女子高校生。これは分類Aの、相手役を想定し
て演じるからやはり劇的展開がリアルタイムで感じられ演劇の魅力が大きい。
それに、全編全力で動き回るその迫力もまたこの舞台の大きな魅力だ。
演目5 アフリカ産オスジロアゲハのメス
札幌=脚本・演出/イトウワカナ 出演/今井香織
少女の、退屈でしかも多少の変化が少し刺激的な、同じことの繰り返しの日
常が延々と演じられる。やがて女になっていく少女は、見掛けは可愛いのに芯
の強さが感じられる。
オスジロアゲハのメスは、6種類の毒アゲハに擬態してわが身を守るという。
演目6 101人ねえちゃん
大阪=脚本・演出/早川康介 出演/大塚宣幸
100人の女性と付き合った男が、その後に現れた一人の女性のためにその100
人の女性と別れるという奇想天外な別れのテクニックを次々に展開する。
これも相手役を想定するAの方法論。男女の葛藤を時間系列で演じていくか
ら面白い。スピード感と別れの手口の意外性とが混然として次々と期待が高ま
っていく。
何人かを纏めて処理する場面などは、やられたという気もするが、それも一
つのテクニックだと思えば憎めない。
☆
以上の6本を観て感じることは、日頃思っている一人芝居の3分類の方法が、
一人芝居の面白さを感じさせる大きな力になっていると思われたことだ。
もちろんこの仮説を吹き飛ばすような一人芝居があるのかもしれないし、僕
以外の人には無効な仮説かもしれないのだが、僕にとってはとても有効な方法
だと再確認した。
それともう一つは、特に台詞の多い舞台や動きの激しい舞台でのエネルギー
の大きさの迫力である。
「アフリカ産のオスジロアゲハのメス」の今井香織の台詞には紛らわしい繰
り返しが多く、観ている方が混乱しそうなのに理知的に平然と演じているし、
「いまさらキスシーン」の玉置玲央は激しくアクロバット的な動きを休むこと
なく続けて全身汗まみれなのが爽快だし、「101人ねえちゃん」の大塚宣幸に
至っては、その両方に圧倒される。
そしてそれらが、この6作品競演の魅力であろうか。
☆
ちなみに僕の規定する「一人芝居の3分類」とは、
@ 自分自身やある特定の人物の心情や、その生きてきた人生や、あるべき
人生を一人称で語る芝居。
A 相手の存在を想定して、その架空の人物と遣り取りしながら物語を進め
る芝居。
B 一人で複数の人物を演じて、物語を展開する芝居。
以上の3種類と、その混合型もある。