観劇日時/11.8.31. 劇団名/シアター・ラグ・203 公演回数/水曜劇場Vol 21 通算第295回 作・演出/村松幹男 音楽/今井大蛇丸 音響オペレーター/湯澤美寿々 照明オペレーター/斉藤わこ 宣伝美術/久保田さゆり 劇場名/ラグリグラ劇場
アラフォーらしい3人の女たち。一人はこの歳で未だに契約社員・柳真海( =吉田志帆)であり、一人は企画会社でバリバリのキャリァ・ウーマン・真中 友美(=田中玲枝)、そしてもう一人は専業主婦の大友厚子(=瀬戸睦代)で 小学生の息子が居る。 真海は何かに襲われているような妄想なのか悪夢なのかに悩まされている。 真海は一大決心をして派遣社員を辞めて独立する。企画と経理面は友美が、 レシピとか実務面は厚子がホローして、栄養士の資格を持つ真海の弁当屋は開 店する。 だが弁当屋は思惑通りにいくわけがない。3ヶ月で行き詰まる。だが二人は 友情を越えて、というか自分たちの存在意義をかけて、弁当屋の延命を画策す る。 この辺はよくできた一種の風俗喜劇だ。問題は真海が背負い込んだ誰かの思 いが詰まった不思議な箱の存在だ。 彼女はずっとその意味の分からない箱に自分の生き方や生き死にまでも支配 されて居るような幻想をもっている。 この一人相伝と称する現実放れのした箱を操る男(=平井伸之)の存在だけ がこのリアリティの強い物語の中で異質になっている。 もちろん、この男は真海の幻想の中の人物であると思うのがこの物語を了解 する基本なのだろうが、最初に余りにも組織に狙われているから必死に逃亡中 とかの設定や、真海の自宅での3人の飲み会に突然現れて、その箱を預かって 貰おうとするとかの非現実的な設定が強すぎて、ここまでくると単に真海の幻 想とは考えづらい。何かカラクリがラストでアッと驚かせるんじゃないかとい う期待ははぐらかされた。 それと気になったのは、真海の屈託の原因が病気だったというのも、余りに も即物的すぎて、はぐらかされた思いが強く、もっと形而上的な何かが真海に 起こったのではないのかと想像した観客の思いを裏切られたような結末であっ た。 だから彼女の病気が命に係わることじゃなくて見舞いに来た二人が喜び、担 当の医者(=平井伸之)があの正体不明の男と瓜二つでしかも真海に好意を持 っているらしく、これまで散々に男運の悪かった真海にも幸せが訪れそうなラ ストシーン…… だがこれも、こじつけたハッピーエンドであり、エンターテインメントとし ては良く出来ていると思うのだが、村松戯曲としては物足りない感じが強い。 なお、「ングッ!!」というタイトルは、真海が喉に異変を感じたときに発す る異常な呼吸音のオノマトペであり、真海が事業の失敗と身体の異変で絶望し て親友二人から逃れようとするきっかけとなる音である。