演目 熱帯樹
観劇日時/11.7.23.
劇団名/風蝕異人街
公演回数/第48回
原作/三島由紀夫 演出・照明・美術/こしばきこう
音響操作/李ゆうか・遠山達也 舞台監督/山谷義孝
衣裳制作(恵三郎と律子のガウン)/斎藤もと
巨大鳥かご製作/JAMANI
スタッフ/丹羽希恵・和泉一恵・工藤千草
宣伝美術/中野地香子・駒井千春
制作/実験演劇集団「風蝕異人街」
劇場名/シアターZOO

象徴的心理劇の大作
 親子(父・恵三郎=今井尋也/母・律子=三木美智代)と、兄妹(兄・勇=
吉松章/妹・郁子=宇野早織)との複雑で怪奇な、人間存在の根本に関わる愛
憎の心情を具体的に表現した一種の心理劇である。
 だからその象徴的存在の具体化には、ビジュアルな要素が重要なのだが、実
際の舞台ではかなり違和感が強い。
 例えば、この物語の中心人物である兄妹の造形だが、リアリティのない二人
の存在に対して、リアリティ丸出しの宇野早織と俗っぽい風貌で宇野よりも身
長の低い吉松とのカップルは、「熱帯樹」物語の存在そのものが破綻している
と思わざるを得ない。
 熱帯樹が日常感覚としての存在ではないから、この家庭のありようが熱帯樹
のような在り方だという考え方は面白いし、ラストで兄・妹が心中行に旅立っ
たあと、母親がその後釜に実際の熱帯樹を植えようと決心する場面は象徴的だ。
 そして、このラストの出立場面は、何かビジュアルを超えて、一種の清々し
さも感じられたのは意外だが成功だった。