演目 鯱鉾姉妹
観劇日時/11.7.16.
劇団名/劇乃素艶屋
公演回数/第7回
作・演出/矢野ツカサ 照明/豊島勉 音響/松浦みゆき
制作/MARU 宣伝美術/ナシノツブテ
劇場名/旭川山口ビル2F アトリエ錬庵

マイノリティの人たち
 ママ(=小川恵理)が経営するニューヨークの歓楽街を気取った小さな店は
女装愛好者のたまり場。常連のルーシー(=松下音次郎)は実直なサラリーマ
ンで妻子のある身、しかも女装のことは妻子には内緒だが、普通に家庭を大事
にしている。
 この店を訪ねて来た可憐な女の子・チエリー(=大友理香子)は、父親が女
装趣味者で幼い頃の想いは複雑だが、実は彼女は男で、性同一性障碍症の患者
なのだ。
 三人の想いはそれぞれ複雑に交錯する。アメリカ式の退廃的歓楽を享受しな
がらも落ち着かない。やがてルーシーが駅のトイレで着替えするところを見つ
かり、離婚の危機が訪れる。
 チエリーも何故か何者かに襲われる。大きな危機感に襲われるママ。だがや
がてチエリーの誕生日が間近だ。二人は何ものも忘れてチエリーのバースディ
・パーティを盛大に開くことを約束する。
 ルーシーとママは早くから「鯱鉾姉妹」として、金色燦然と輝く鯱鉾の被り
物を頭上にして踊っているのだが、この日はチエリーにもこの鯱鉾の被り物を
被せて3人は陽気に踊り狂う。
 全体に真面目すぎて楽しさ面白さが弱い。折角の歓楽気分が爆発しないのだ。
見かけの爆発的陽気さの中に三人の哀愁を感じたいのだが、話の筋書きでしか
感じられないのは演劇として未完成だと言わざるを得ない。
 一つは音楽の弱さであろうか?狭い小さな劇場のせいもあるけれども、歌も
口パクであり迫力がない。踊りも単調だ。こういう舞台は、ダンスや歌の占め
る要素が大きいのだが、それが小さ過ぎて大いに興を削ぐ。肝心のマイノリテ
ィの人々の哀歓が素直に伝わらず、真面目な解説劇になってしまった。
 ところで、この三つの鯱鉾の被り物は手造りだそうだが、実に上手く出来て
いて変なところに感心した。