演目 爆演
観劇日時/11.7.3.
劇団名/ビジュアルアーツ
劇場名/コンカリーニョ

 昨日のAチームに対して今日はVチーム。その間のSチームは残念ながら所
要で観られなかった。
 演目1は「ストーリィ」で『螢火』。少女から女になる時期のハッピーエン
ドの童話劇である。
 19歳の女の子、螢はわが家の様々な制約を逃れたいと思っていた。もちろん
それは両親の愛情の証なのだが、成長期の彼女にとっては煩わしい以外の何者
でもない。
 ついに切れた彼女は父親と争った末に家を出て、すべての望みを叶えてくれ
る、フェアリーと契約する。
 彼女は次から次へと欲望の限りを尽くして希望を実現させる。だがそのとき
フェアリーは、元へは戻れないということを念押しすることを忘れなかったの
だが、有頂天の蛍は、そのことをすっかりと記憶から落としていた。
 贅沢三昧の蛍だったが、彼女の家庭は、彼女が望んでいたように別の少女・
渚が蛍の代わりにいて、幸せに包まれて平凡に暮らしていた。
 そこには蛍の帰る場所は無かった。でも彼女はそれでも良かったと強引に納
得し、自分の欲望を次々と実現する。
 だが、彼女は本当にそれで良いのかという疑問に苛まれる。でも彼女の希望
は元に戻せないというのがフェアリーとの約束なのだ。
 やがて彼女は、フト気がつくと何事もなかったように、無事に元の暖かい親
子3人の家庭に戻っている。このハッピィエンドは、どうであろうか? 彼女は
おそらく長く悪い夢を見ていたのだろうか?
 夢から覚めた時に彼女は本当に元に戻ったのだ。だが実際にはそんなに甘く
はない。
 僕は、蛍は逃げ場がなくなって絶望するラストになるのだろうと思い、今で
もそうでありたかったと思っている。そういうシビアな結末の方が、実人生に
近いのではないのか。
 それともやはり元の幸せに戻ることの方が演じた彼女たちにとって大事な思
いなのであろうか?
 演目2は「ハジケ」の『ななふしぎ的なアレ』で、とてもエネルギッシュな
舞台である。
 3百年の封印を解かれた妖怪の数々……彼らは自分たちを閉め込めた人間た
ちを信用しない。だが実際の3百年ぶりに接した人間たちは意外と優しかった
……
 でもやっぱり妖怪がこの世で暮らすには世知辛過ぎる。彼らはやっぱり人間
から封印された方が幸せなのかもしれない。元に戻ることを決める妖怪たち。
 これも現世否定か? だが、すこし表現が荒っぽすぎる。エネルギーは充満
しているのだが、話の展開が大雑把で肌理細やかではないのが引っかかる。
 そして演目3で「ホラー」の『声』は、ホラーと言うよりも犯罪現場の再現
である。
 おとなしい彼女は、誰からも愛されない。一人静かにヘッドホーンの音楽に
浸り込んでいる。
 それさえも音漏れで人から指さされ疎外される原因だが、彼女は気が付いて
いない。
 一人の男が彼女に恋をした。彼は全て、彼女の位置に立つ。彼女を排除する
人間たちを次々と殺害する。彼にとってそれは正義なのだ。
 これは「声」というよりも「音」だと思ったのだが、でも彼にとっては、彼
女の内面の声を聴いたということなのであろうか?
     ☆
 今日観たVチームも昨日のAチームも、同じような感想なのだが、基本的に
物語は単純であり、学生たちが創ったにしてはそれほど見るべき内容がないよ
うなのだが、特筆すべきはその驚嘆する若さのエネルギーである。しかも清潔
で爽やかな印象が強かったのだった。