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鑑賞日時 11.6.1.
原作/川本三郎 脚本/向井康介 監督/山下敦弘
劇場名/シネマフロンテイア


挫折した青春の回想記
 70年代の初頭、沢田(=妻夫木聡)は新聞記者になりたかった。
だが社の人事で週刊誌の記者になった。当時左派の論理的報道機関
とみられていた「東都ジャーナル」と対抗するような「週間東都」
を舞台に探訪記事などで人気を博していたが、実際は学生運動の実
体に関心が傾倒していたのだった。
 左翼運動は壊滅の状況の中で、新興左派の「東邦派」の梅山(=
松山ケンイチ)とコンタクトをとり、彼らの純粋と思われる運動に
近づいていく。梅山は本物の左翼なのか?または単なる英雄志向の
行動派なのか?
 だが彼らは武力闘争のために、武器を略奪しようとして抵抗した
自衛隊の兵士を殺害する。梅山は、殺人そのものは個人的に申し訳
ないが、かつて権力は市民の生命を数多く簡単に殺害したではない
かと反論する。
 だが梅山は逮捕され、ニュースソースの提供を拒否する沢田も、
証拠隠滅で2ヶ月の実刑を受ける。
 左翼の実力行動とは何か? ジャーナリストの良心とは何か? と
悩む沢田。
 会社と国家権力である警察との間で、自分の良心を迷わせてさま
よう沢田。
 その過程を丁寧に追って、だんだんと挫折していく沢田の心境が
痛々しい。
 時が経ち、新聞社を自分から辞めたのか辞めざると得なかったの
か、沢田は映画評論家として売り出していく。フト入った小さな居
酒屋の親父は、かつて放浪探訪したときに知り合った男だった。彼
は一介の庶民として妻子を持ち、それなりの生活をたくましく営ん
でいたのだ。
 それを見る沢田は、にぎやかな居酒屋のカウンターで号泣しそう
になるのを隠すのに必死だった。でもこれは単なるセンチメンタリ
ズムに過ぎないのではないのか?ここで泣くのかよって思って白け
るのだ。もっと突き放した冷静で客観的な沢田を見たかったのだ。