番外随想 劇場の理念
 演劇雑誌『テアトロ』8月号に、今年6月「上野ストアハウス」
という小劇場の開館に当たって、代表の木村真悟さんという方が、
次のように語っていた。
 以前に使っていた「江古田ストアハウス」という同じような小劇
場が2年前に、建築基準法・消防法・興行場法の基準を満たしてい
ないという理由で閉館せざるを得なかったときに、消防署で説明を
聞くと「いまはあちこちに大きな劇場が出来ているんだから芝居を
するんならそこでやればいいじゃないか」といわれて「いや劇場と
いうものは、そういうことじゃないんだ」と言い返すことが出来な
かった。
 と、当時の悔しさを思い返していらっしゃる。この言葉から世間
では劇場とは何だと思われているんだろうという残念な思いが伝わ
ってくる。
 劇場とは単に演劇を上演するだけではない。そこに人が集まり語
り合い何かを創り上げていくものなのだという理念が、篤い同感を
以て迫ってくるような気がする。