番外随想 演劇制作のシステム
 久しぶりに本格的に演劇を創る側に立った。20分と言う短編だけ
れども、やはり今さらながらきちんとした制作のシステムの重要さ
を再確認した。
 まず一般的に裏と表と言われる二つの部門が必要だ。一つは演技
や美術、装置や照明、音楽・音響効果など直接に演劇の中身を創る
部門がある。
 それに対して表と言われている、いわゆる制作というセクション
が必要となる。これは主に財政と渉外との分野だ。その両部門を繋
ぎ調整するのが舞台監督の仕事であろう。
 舞台監督には3つの仕事があって、その第一は、創る部門の調整
であり、2つ目は表方と裏方との連絡、そして3つ目は、実際の上
演に当たっての進行に全責任を負うという、極めて重大で大量の仕
事である。
 この車の両輪ともいえる二つの部門が、舞台監督の調整によって
うまく展開しないと演劇という多人数で創る芸術は潤滑には出来上
がらない。
 もちろん新しい考えを持つ人たちもいて、そういう一種のヒェラ
ルキー的な組織に基づく作品創りの方法論から脱却しようとする人
たちも当然いるのだが、長い間に培われたこのシステムは使い方に
もよるが、たいへん優れたシステムだと思う。
 僕たちが今、創っている演劇は、時間も短いし関わる人数もごく
少数だから、このシステムを完璧に構築しているわけではなく兼任
も多い。だが、少なくてもその優れた使い方はできるだけ踏襲して
良い作品を創る道具として使いこなしたいと思っている。
 この何か月間は、そういう意味で演劇を別の側面から再検討する
とても良い経験をしていると思っている。