演目 家には高い木があった
観劇日時/11.6.25.
劇団名/弘前劇場
作・演出/長谷川孝治 舞台監督/野村眞仁
照明/中村昭一郎 音響/田中守理 装置/鈴木徳人
制作/弘前劇場 協力/アクトレインクラブ
劇場名/シアターZOO


懐かしい家族の物語   
 25年以上も昔、初めて劇団「青年団」の芝居を観て驚いた。「演
劇」とは文字通り「劇的な展開を述べること」だと思っていたのに、
「青年団」の舞台には劇であるべき葛藤がまったく現れないのだ。
 そしてこれを筆頭にいわゆる「静かな演劇」というジャンルが力
を表してきた。「静かな演劇」とは文字通り、舞台には直接の葛藤
が現れないけど、実は見えない水面下ではドロドロとした、それぞ
れの人間たちの意識下の不気味な葛藤が透けて見えるという構図に
なっているのだった。
 その後様々な「静かな演劇」が現れたり、その静かな演劇にも新
しい表現方法が模索されているけれども、この弘前劇場は、今やそ
の正当な伝統を守っている集団の一つといえるであろう。
 今日の舞台も、例に漏れず、先代のお葬式に10年ぶりで集まった
兄妹たちの交流の展開の成り行きである。
 4人の成人した兄弟には、もうすでにそれぞれの生活基盤があっ
て、かつてのような関係には戻れない。だが血の繋がりは切れない。
兄弟も何か他人行儀で、無理して昔の兄弟関係を演じて現実逃避を
しようとしているような雰囲気が感じられる。
 多少の大げさでおふざけのような小競り合い以外には何も起きな
い、日常的な慌ただしい葬儀後の懐かしい家族の物語……
 だが肝心の、潜在意識にある個々の人たちの葛藤があまり感じら
れないから、芝居は単なる久しぶりに集まった家族の懐旧復古談に
しかならなかった。
  出演、長男=福士賢治・妻=国柄絵里子・次男=木下きよし
     長女=小笠原真理子・その夫=相澤一成・三男=林久志・
     大学院生=田邉克彦 大学院生=猪股南 
     スナックのママ=平塚麻似子・菓子職人=高橋和子・
     蕎麦屋=永井浩仁・造園業=長谷川等
     長男の同僚=高橋淳