演目 かくもしあわせな
観劇日時/11.6.18.
劇団名/パーソンズ
公演回数/第2回公演	
脚本・演出/畠山由貴 照明/鳥海剛 音響/山崎孝太
劇場名/札幌・琴似 ターミナルプラザことにパトス

二つの家族の人情物語   
 母・百合(=幽霊・畠山由貴)が若くして亡なくなって今、長女
・美咲(=佐藤愛梨)は自由気ままなフリーター、高校生の次女・
旭日(=工藤舞子)が家事一切を取り仕切る母親代わり、そして小
学4年生の3女・和泉(=宮崎安津乃)はまだまだ子ども。女3人
と父親だけの残った家庭は、それなりに平凡だけど生き生きとした
家庭であった。
 父親・幸助(=鎌田大介)は、零細な出版社のダメで冴えない編
集者だ。4年前に少女・藤野絢子(=能登屋南奈)が書いた小説が
各種の文学賞を受賞して、彼の勤務する出版社は大いに賑わった。
 だがそのとき父の最愛で相思相愛の妻・百合は宿病で生死の境に
あり彼は仕事に没頭し妻を見舞いもしなかった。だが妻は、むしろ
彼の仕事一途が嬉しかった。
 あの作家・藤野絢子はあれ以来、鳴かず飛ばずだ。彼の出版社は
何とかして、金のために大手の出版社に寝返った作家を、もう一度
自社で蘇らせたい。
 だが彼女は、金一辺倒で作品に対する意欲はなく堕落している。
社長であり編集長でもある松方美雪(=阿部星来)は、なぜそんな
作家にいつまでも拘るのか……
 あちこちの出版社から見放された新進作家を、編集者・幸助の自
家に居候させてまで、作家と編集者との共同作業に固執する編集長
……
 団らんの一家に強制的に同居させられた作家、それを受け入れざ
るを得なかった父・編集者。
 猛烈に反発する娘たち、とくに歳の近い長女の美咲……同居を監
禁と感じながらも同居せざるを得ない作家。
 実はこの作家には、家庭が崩壊して孤立孤独な生活を余儀なくさ
れ、それがトラウマになっていた不幸な歴史があったのだ。しかし
この捻くれて自分勝手な作家を、無理してまでかばう編集長には、
また家族の秘密があったのだ。
 作家の父親である編集長の弟は、勝手に出奔して母は亡くなった
のだが、彼女・藤野絢子は編集長にとっては肉親の姪だったのだ。
だから藤野絢子は、作家になって稼いで自分を捨てた父親に金を渡
して親娘の絆を取り戻したかったのだが、それは誰にも、たとえ叔
母にも言えない秘密だったから、極端に頑なにならざるを得なかっ
たのだった。
 この一家の父親・幸助の、不幸を一身に背負ったようなオーバー
な演技と、若い女性作家の極端に大袈裟でイヤミな演技にちょっと
引くのだが、ありふれた物語なのにリアリティのある演技者たちに
は一種の魅力がある。
 3人姉妹の特に小学生の存在感が見事だ。おそらくそれ相応の年
齢だと思われるのだが、見事に小学4年生である。それに感心した。

     ☆

 だが先日来、観てきた学生演劇も含めた幾つかの演劇の、見事な
までの、俗物性というか古臭いエンターテインメントの演劇の氾濫
は一体どういうわけなのであろうか?
 もう少し骨のある、若い無謀とさえ思われる力の溢れる演劇が観
たいのだが……