演目 皆拓狂騒曲  学生対校演劇祭
観劇日時/11.6.18.
公演回数/第二章
主催/さっぽろ学生演劇祭 6月実行委員会
劇場名/サンピアザ劇場

演目1 U.M.A  
劇団名/北海道情報大学演劇部
作・演出/知久貴大

 地下の下水道に住むホームレス3人組。そこへユーマという未確
認生物を探索に来た学生の3人組。ユーマとはUMAで、
Under Mistake Accident であると……
 そして地下水道を監視する役人。この3組の絡みが面白いのだが、
それを操る調査員の男女の存在が不明瞭。
 狙いどころは面白いのだが、致命的なのは、全体に脚本・演出・
演技が素朴すぎることだ。


演目2 対怪獣戦線異状なし  
劇団名/演劇戦線=小樽商科大学
作/西嶋一輝 演出/山岸大

 超人怪獣の活躍するDVDに、興奮して大騒ぎして騒音を発する
独身男の部屋に抗議に来る管理人と警官。
 警官に後を任せて管理人が去ったあと、男と警官はなぜか共感す
る。
 やがて街に怪獣が現れて警官は緊急出動すると、一人になった男
に連絡が入って男は出動する。実はこの男、地球防衛軍の一員であ
ったのだ。そういう共感であったのか……
 マンガの劇化みたいで結構面白いのだが、全編がオーバーアクシ
ョンでメリハリがなくうるさくて少々疲れるのと、音響効果が大き
すぎて台詞が聞こえないなど、われわれ年配者に対しては繊細な気
遣いが足りないが、これがいまどきの若い感覚とでもいうのだろう
か?そういう意味でも何となく興味を惹かれる小品ではあった。



演目3 井の中の蛙は知っている  
劇団名/北海学園大学演劇研究会
作・演出/津川真大

 炭坑で働く父と息子。貧乏だけど仲良く平凡な一家。だが息子は
倦怠な日常を満たしきれなくて仕事に身が入らない。
 それを知った父親は、さりげなく自分の若い頃も同じだったと述
懐して解雇を言い渡す。そして帰る場所は用意しておくと言って送
り出す。
 リアルな演技が、現実離れして誇張された母親の演技を不自然に
感じさせない。



演目4 墓穴を掘る男  
劇団名/しろちゃん=北海道大学
作・演出/河内博貴

 同級生の誕生祝いに、ドッキリ・サプライズで落とし穴を掘った
のだが大きすぎて上がれなくなった。
 見に来た当の相手に計画を打ち明け助けを求めて引っ張り込む。
穴に落ちた二人は様々な妄想を楽しむ。
 発案者は男の憧れの彼女だった。それを知った謀られそうになっ
た男は、彼女に助けを求めるふりをして、入れ替わる。
 ぎこちない二人、ナンセンスと機知に富んだ軽い話で洒落ていて
演技も軽快だが、何のメタフアーや寓意があるのか?



演目5 彼氏は都市伝説  
劇団名/空の魚=北海道教育大学
作・演出/加納絵里香

 テーンエージャの恋の妄想。若いだけにかなり危ないようなシチ
ュエーションの情景が大勢の出演者のカットバックで次々と賑やか
に現れる。
 ただそれだけの、言ってみればモダーン・コント集とでも言おう
か。
 しかしコントと短編演劇との相違というものについて、僕自身も
まだ確実に掌握し切れてはいないのだが……



演目6 トンネル  
 役者にアクシデントが発生したために休演でした。


演目7 無人島で  
劇団名/宴夢=酪農学園大学
作・演出/望月凜太郎

 海外旅行中の若い男二人が、余暇の時間を利用して酔った挙句に
ボートで海へ出た。
 うたた寝して目が覚めると、そこは無人島であった。慌て騒ぐ男、
冷静に救助の方法を考える男。
 その時間の経過にも二人の男の考え方や行動の仕方に違いが出る
のだが、どんな相克が展開されるのかなと思っていたのだが、僕は
観ながらいつの間にかウトウトとしていて、フト気がついたら終わ
っていた。
 客席に僕の知り合いが居たので経過を聞いてみると、その後、も
う一人の友人が救助に来て、何事もなく無事に帰っただけであった
そうだ……
 いったいこれは何なのだろうか?途中で寝たので批判をする資格
はないのだが、寝させるような芝居って何なのだろうかとも思う?

      ☆

 6演目の中では最初の『U.M.A.』と次の『対怪獣戦線異状なし』
とが稚拙な創りなのだが、何か脚本に潜在する魅力があると思われて、
きちんと台本を整理して的確な表現をすれば面白い舞台が出来上がる
のじゃないのかと感じさせる要素を持っている。
 『井の中の蛙は知っている』は、表現の技術は一定の力を持ってい
るのだが、古い家族人情物語なので、そういう訴求力はあるのだが、
学生演劇としてはなかなか評価が難しい。
 『墓穴を掘る男』と『彼氏は都市伝説』の2作品は、どちらもナン
センス・コメデイというか、洒落たコントの羅列なのだが、表現技術
が上手いので、そこそこ楽しめる。だがこれも一つの学生演劇だとす
ればいささか寂しい気も強くする。
 そして『トンネル』は、あいにくの休演で観られなかったから、こ
れはまったく論評外、だが当日パンフレットの紹介によると、これも
また「お客様は何も考えすに楽しんでください」と言うことだ……あ
あ学生演劇……