演目 あるスープカレー屋の伝説
観劇日時/11.6.12.
主催/ティーツーワイジャム 協力/カレーヤーズ
演出/飯野智行 脚本/中野智樹 美術監督/川原亙
舞台照明/佐藤律子 音響・音楽プロデューサー/金沢琢司
ヘアメイク/諸橋みゆき
制作/ティーツーワイジャム 制作協力/トップシーン札幌
プロデューサー/玉木雅人 制作総指揮/佐藤仁
スープカレー監修/イデ ゴウ(札幌らっきょ)
劇場名/ターミナルプラザことにPATOS


古臭い人情喜劇
 これまた昨日に観た『親父の首輪』にあまりにもそっくりなのに、
驚くと同時に最近のエンターテインメントの大きな傾向なのかなと
首をかしげる。ストーリーを書くのもおっくうだが簡単に説明する
ことも必要であろう。
 父親と祖父の残した小さな事業を継承したマサオ(=黒岩孝康)
だが、うまくいかず、ついには父が最後に残した蕎麦屋を継いだボ
ロ食堂を「新感覚 和風レストラン」として称して、怪しげなメニ
ューを頻発したがジリ貧は免れない状況である。
 そこへやってきたのが都会で挫折して帰郷したヨシタカ(=飯野
智行)だが、食事の為に偶然、入ったのがこの店だ。
 不味い食事に怒ったヨシタカは、マサオに気に入られて店長とし
て店の改革を依頼される。
 この話の経過は、卓越した演技力で面白可笑しく魅せるのだが、
何か虚しい。予定調和で結果が推測されるからだ。
 マサオの没落の原因を作ったのがヨシタカの父親の事業だったこ
とを知ったヨシタカは俄然意欲を燃やし、独特のスープカレーを創
り出し成功を収める。
 この中に流しの音楽コンビ、作詞・歌(=小橋亜樹)と作曲・三
味線演奏(=竹内獅子丸)が絡むのだが、これも職人的な技巧の上
手さで、下手なお笑いコンビなど足元にも及ばない。だからこれは
一見に値するエンターテンメントであることは間違いない。
 ともかく昨日と同じように、演劇に慣れないような観客の多い客
席を沸かしていたことに不思議な感慨を持つのだった。

     ☆

 考えてみると、昨日も今日もTVでお馴染みの出演者が多いのだ。
というより昨日は3人ともTVの出演者なのだ。これも演劇のすそ
野を広げるためには必要なのだろうか?
 逆に考えると、TVに飽き足りないと言うか、演劇では食えない
からTVに出ているのか、そういう人たちの創る演劇が、演劇ビジ
ターにとっての入門編足り得るのか?ということを考える必要があ
るのかなとも考えられるのだ。
 もちろん基本的には、ライブと映像とは根本的に異なった表現方
法であり、それぞれにはそれぞれの特性がある、ということは大前
提なのだが、いわゆるエンテーテインメントという側面で考えると、
そこにどんな差異があるのか、一方はもう一方の単なる代替なので
はないかなどという疑問も出てくる。
 何かいつもそういう、どうでもいいようなことをひねくり回して
考えあぐねているような気もするのだが、果たしてこういうことが
演劇の何物かを考察する一つの足掛かりになるのだろうか?