演目 蟹と彼女と隣の日本人
観劇日時/11.6.11.
劇団名/TPS・青羽(チョンウ)共同制作公演
作/斎藤歩 演出/キム・カンボ	
照明/ステージアンサンブル(オペレーター・矢口友理)
舞台監督/尾崎要 舞台スタッッフ/TPS劇団員
コーディネーター・翻訳・字幕/木村典子 
宣伝美術/若林瑞沙
制作/阿部雅子・横山勝俊 
ディレクター/斎藤歩 プロデューサー/平田修二
劇場名/札幌・新さっぽろ サンピアザ劇場

日韓友好ドラマ
 ススキノの外れにある古い中華料理屋、といってもラーメンから
チャーハンからカレーライス、トンカツまで何でもある大衆食堂の
女主人(=宮田圭子)と、昼はここでアルバイト夜はススキノのホ
ステスをしている女(=高子未来)、そして韓国から出稼ぎに来て
いるアルバイトの若い男(=イ・スンジュ)。
 夕方、スンジュが一人でカレーの作り方を復習しているときに宅
配便(=佐藤健一)が届く。スンジュは、そのまま出前を下げに行
く。
 女主人が、隣で兼営する古色蒼然たるボロアパートへ若い美人の
貧乏留学生(=イ・ドウ)が越してくる。
 宅配便が誤配に気づいて取り戻しに来たところから芝居は急展開
する。スンジュのうっかりから荷物の活蟹は逃げ出して居なくなっ
たのだ。
 イ・ドウの隣の部屋の住人は、いい歳をしてフリーターの木村洋
次で、支離滅裂でへんてこな韓国語を喋るが根は気のいいおっちょ
こちょいの変人だ。
 彼らが巻き起こす騒動は、ちょっとリアリティに欠けるところも
あるが、騒々しく楽しく愉快な隣人愛の物語であり「何国人でも人
間は同じ人間である」という台詞に集約される。
 つまりここには一切悪人は登場しない。ソウルも東京も札幌も不
景気でどこでも庶民の生活は苦しいよというメッセージもあるのだ
が、基本は「世界は一つ、人類はみな兄弟」のプロパガンダ劇みた
いである。観ていていやな気分はしないが、何となく微笑するほど
のものだ。
 過剰な暖房用具は意外に電気代が掛かっていることを知って女主
人が呟く「電気代が想像以上に高いし、それで電気を作る原発なら
要らないわね」という台詞も悪い訳じゃないけど、何となくついで
に入れたような気がしないでもない。
 悪気はないがそれだけの娯楽劇をうまく創ったなという感じであ
る。