演目 Pair Play Parade
観劇日時/11.6.4.
主催/演劇専用小劇場 BLOCH
制作協力/リリカル・バレット
劇場名/演劇専用小劇場 BLOCH

 5つの劇団が参加して、それぞれが25分前後で出演者二人だけの
短編演劇を競演する催し。最近こういう企画が多いような気がする。
なぜ短編が多いのだろう?ガッチリとした骨の太くて強い長編を観
たいと思うのだが……
 それと今、タイトルを書いていて気が付いたのだが、最近タイト
ルや劇団名に横文字が多いのも気になる。
 今回の参加劇団5つの中、4つまでが劇団名が横文字、しかも残
る1つも半分が横文字だから実に90%だ。そしてタイトルは2つと半分、つまり50%という驚異の数字である。
 いま初めてこんなことを取り上げてみたのだが、一体これは何を
意味する現象なのであろうか?日本語ってそんなに頼りないのか、
センスが悪いのか?不思議な感じがするのだ。

演目1 Cross 〜 悠愁の叢雨
劇団名/PLANETES
脚本/丹治誉喬 
演出/PLANETES 演出補/倉石和紀

大人になりきれない男のある日
 映画監督になる夢を諦めたサラリーマン(=下出和也)は、フト
故郷の同窓会に何気なく出席して、それぞれの大人の人生に触れた
その帰り急に雨に降られたバス停。豪雨の中、いつの間にか高校時
代の淡い恋の想い出が蘇る。
 彼が彼女(=構香織)を振って映画への道を進む決心をしたとき、
彼は「僕が失敗したらどう思う?」と聞いた。そのとき彼女は「ど
んな人生でもテッペイ(彼の名)はテッペイ」と答えたことを思い
出す。それでも今でも彼女は自分のことを変わらず想っているのだ
ろうか?
 雨はやみ、彼は相変わらず明日からの日常を思い浮かべながら、
それでも少し元気になってバスに乗り込む。
 入れ違いに、昨日は欠席していた、すっかり大人になった彼女が
バス停にやってきて、何となくあたりを見回し、そして何事もなか
ったように去って行くのだった。

演目2 あるあめ、
劇団名/COLORE
脚本・演出/太田真介 出演/森高麻由・国門綾花

謂れなき青春の恐怖
 同居する二人の女子学生、ドッペンゲルガーの現象に憑りつかれ
たその一人。そしてそれが伝染して増幅する。これも雨の中の話。
 陰鬱なある日のいっとき。あり得ないことの恐怖に恐れ戦く一つ
の青春の断面。

演目3  試練まで4,000,000,000KM
劇団名/PainSoe
脚本・演出/山田マサル

権威を茶化すナンセンスの可笑しみ
 教師(=藤谷真由美)と生徒(=ツルオカ)、教授(=ツルオカ)
と学生(=藤谷)を交代で演じながら、過去と未来とを考察する。
未来しか在り得ない現在の過去願望。
 難しい哲学的命題を、無茶苦茶な体技と、彼女の同時撮影された
映像との掛け合いを使って、ナンセンスな笑いの中に展開する。

演目4  スーパードライビングスクール!! ‐激録!ワタシの500m逃走!‐
劇団名/星くずロンリネス
脚本・演出/上田龍成

これもナンセンスだが底が浅い
 自動車学校の女子生徒(=飛世早哉香)と指導員(=柏民レジヲ)
との徹頭徹尾ナンセンスな掛け合い漫才。
 スーパーマーケットが教習所で、手押しの移動買い物籠が練習車
であり、指導員の指示にいちいち商品を取り出して対応する類の真
正ナンセンス。思わず吹き出すギャグだが、それだけの話でしかな
い。

演目5 Q.E.D
劇団名/リリカル・バレット
脚本・演出/谷口健太郎

残酷ミステリィ
 現職刑事(=谷口健太郎)の双子の弟が射殺された。自称私立探
偵の彼はひき籠りで、兄・刑事の厄介者だったことを自覚していた
から自殺説で決まった。
 それに疑問をもった後輩刑事(=隅田健太郎)は、兄の帰宅と発
射音との間に空白の3分間があることから、仮説を立てて兄の刑事
が犯人と推理した。
 上司から軽く見られているその後輩刑事は、実は仕事の出来るそ
の先輩刑事を尊敬している。しかし誰も推察しえなかったこの自分
が仮説を立てた推理が当たっていれば、先輩刑事は失脚するであろ
うが、逆に自分はその力を認められて重用されるだろうと考えたの
だ。
 しかし先輩刑事は、その前提条件に基本的な間違いがあると言い、
現場を再現すると称して弟役の後輩を同じように射殺する。もちろ
ん指紋を付けないように気を付けて……
 だが実は、兄と思わせていた刑事は射殺されたはずの弟(=谷口
健太郎)であり、いつも負担をかけていて劣等感に悩まされていた
兄を亡き者にし、自分が兄よりも優れていることを秘かに証明しよ
うとしたのだった。
 しかも歯形から露見することの危険に備えて、周到に次の手さえ
打っていたのだった。
 虐げられた者の怨念が肉親殺害という極限の状況を現出し、同時
にやはり負者である後輩刑事が絡んだ社会正義派的な問題意識の強
い見応えのある一編であり、こういう舞台に良く似合う2人の健太
郎が身丈にあった渾身の演技で、この短編演劇祭の掉尾を魅せたの
であった。
 ただ前半で、双子の兄に怨念を持っていた弟が全く描かれていな
いので結末がちょっと意外な感じもするのだが、もし弟がもっと描
かれていたら早くに観客が結論を予想していたかもしれないので、
難しいところだ。