演目 スウィート・ソウル
観劇日時/11.5.16.
劇団名/弦巻楽団
公演回数/#14
作・演出/弦巻啓太 照明プラン/相馬寛之 
音響操作/渡辺智之 衣装/佐々木青 美術プラン/川ア舞
宣伝美術/藤原袖 制作/大沼理子・大原達也 弦巻楽団
美術制作/上田知 撮影/佐藤さゆり
劇場名/札幌・中央区 シアターZOO


深刻な喜劇
 悲劇とは何か?そして喜劇とは何か?という定義というかその命
題の規定から話を始めなければいけないのかもしれない。この芝居
は、悲劇を内蔵した喜劇なのだ。
 喜劇とは、人間の存在の微かな矛盾を表現して、その愛らしい存
在を暖かくそして厳しく笑って共感しようとすることである。
 それに対して悲劇とは、人間の存在そのものの、どうしようもな
い宿命の哀しみを表現したものであろう。
 だから喜劇と悲劇とは裏表なのだ。この舞台はその対人関係とい
う逃れられない宿命の悲劇を、些細な人間関係の喜劇として同時に
表現した。
 物語は行き詰まった二組の夫婦(=藤谷真由美・楽太郎・江崎未
来・小野優)が活路を開くべく画策した結婚記念日でのパーティの
進展状況である。
 二組の夫婦の記念日ではあるけれども、お互いの気持ちは全くす
れ違っている。だが、そのことを知っていながらお互いに、どうし
ようもできない。
 そんなカップルって、どうなのよ?って思うのだが、とりあえず
人生ってそんなものなのよ、って言うしかないのだ。
 招待されたカップル(=佐井川淳子・温水元)と押しかけたカッ
プル(=大沼理子・吉原大貴)の、それぞれの必要不可欠な存在と
しての将来は、いったいどうなるんだろうか?って思うと何か気に
なる訳だ。
 そこへこれも押しかけ気味の詩人を名乗る浮浪者のごとき男(=
弦巻啓太)の登場で混乱する。
 この貧乏詩人も何か典型的で怪しいし、二人の妻が共犯で毒を盛
ったケーキを内緒で食べるというのも、ちょっとワザとらしいかな
と思ったけれども、後になってこの男が刑事であり、最近全国的に
広がっている詐欺まがいのケーキつくり教室にまつわる疑惑を探っ
ていると分かると、そのケーキつまみ食いも事件捜査として正当化
される。
 ちょっと無理筋の話ではあるけれども、意外にリアリティがある
のは演技陣の成果であろうか?ただし温水元の大仰で正面切った臭
い演技はいただけない。そこだけが突出して現実味を失っている。