観劇日時/11.4.29.
劇団名/男肉duソレイユ
団長/池浦さだ夢
舞台監督/Inagaki Hiroshi 音響/菊池航・照明/川北唯・
映像/角田行平 宣伝美術・写真/松本久木
制作/小山佳織・高阪勝之
出演/陰核・江坂一平・小石直輝・高阪勝之・城之内コゴロー・
すみだ・チェン・吉田みるく・中川晴樹
劇場名/札幌・中央区・シアターZOO
表現の新鮮さと話の平凡さ
物語原理主義者の筆者としては、やはり話の展開に最大の関心を
持たざるを得ない。
最初、中産階級の家庭に育った少年が、劇的人生を求めて未知の
旅に出るという話の出だしは関心が強かった。
そしてそれよりも面白かったのは、その表現の方法だった。ふつ
うの演劇的な表現じゃなくて、ダンスによる一種の象徴的で様式的
な表現が新鮮であった。
劇的な人生を求めて新しい旅に出る少年の話自体は、それほど珍
しいことではない。
でもこの肉体の表現の限界を求めようとして苦闘する一種の自虐
的表現の力強さはいったい何だろうかという疑問と好奇心が湧き起
きる。確かにその表現方法は、この冒険少年の心情を表しているの
ではないか、とは言える。
彼は二つの高校を流れ歩きながら、自分の劇的人生を実感するこ
とが出来ない。
もう一度言うが、もちろん劇的人生を求めて放浪する物語はたく
さん有るのだけれども、僕が感じたのは、その肉体を使った捨て身
の表現の方法の衝撃だった。
さて話が急に転換するのも不自然なのだが、彼は突然、絶望し樹
海に迷い込んで自殺を試みる。
だがそこでこの樹海の主である森の民と出会ってこれまた突然、
環境保存運動に力を尽くす。
つまりこの物語の後半は、地球環境の保存運動の教訓的説教的説
話の展開である。
だからそれ以後の物語の展開は、話としても教訓的で説教的で面
白くなく退屈で、演劇的ではない。
ラストで、自然を無くすのは人間だからその人間を纖滅させるべ
きだという意見と、人間と自然とは共生すべきだという考えとのデ
イベイトはこの芝居の結論だろう。それは確かに、平凡だけど大事
な結論だけどそれが劇団「男肉duソレイユ」の結論なのか?
それは余りにも単純な図式であり、なぜそれを大きな枠組みで象
徴的に表現しなかったのか分からない。
ギリシャ神話の海の神であるポセイドンとの対決は付けたしみた
いで退屈でしかない。
だから物語はバラバラで単純で面白くはないのだが、再々言する
と、肉体を極限まで酷使するこの表現方法はやはり新鮮で衝撃的で
はあった。