演目 Sweet Back Drop
観劇日/11.4.23.
劇団名/演劇ユニット電気ウサギ
作・照明/大橋榛名 演出/手代木敬史 衣装/矢野あい
舞台美術/高村由紀子 音響/橋本一生 小道具/大橋あすか
制作/橋本奈於・酒井歌織 イラスト/鈴木千尋
宣伝美術/くら スーパーバイザー/大門奈央子
劇場名/札幌・琴似・メシアニカビル地下1F


夢と現実との混沌する奇妙な世界
 現実を逃避して引きこもりの世界へ行ったはずの男(=城谷歩)
は、奇妙な古物商(=山下カーリー)の強引な導きにより、幻想の
家へと導かれる。
 そこに居たのは彼を待ち慕う可憐な女(=榮田佳子)のまとわり
つきであった。
 そして彼の親友(=小林エレキ)と、たった一人の肉親である仲
の良い姉(=高平幸恵)であるはずの男女であった。
 そこで彼は、人格の変わった姉と親友と,奇妙な古物商たちによ
る幻想の世界の様々な経験をする。それは夢だか現だかも分からな
い不思議な世界である。
 彼は一人っきりの逃避の夢を追ったはずなのに、現実からは逃れ
られないのか?
 フト現実の喧噪に帰った彼は、現実の人たちが幻想の衣装を着て
いるのを見て、これは本当の現実なのか?と自問自答する。現実の
世界に居ながら、幻想と現実の区別が付かなくなった人間の不思議
な感覚である。奇妙な存在感である。
 2時間という長丁場は、飽きさせないスピードで流れるし、夢の
世界のきらびやかな衣装と、先ほどとは矛盾するとも思われる、現
実の人間である姉と親友とは地味で現実的な衣装で、その早変わり
も一見分かりやすい。
 だが結局、所詮、これは幻想と現実とのあわいと、その非存在感
と浮遊感と奇妙な頼りない感覚などなどという人間の非現実的存在
の自覚を丁寧に見せた高級エンターテインメントでしかないのでは
ないのか?
 話の展開と、その登場人物の存在には奇妙な魅力があるのだが、
錚々たる役者陣を並べて長丁場を観せるにはもったいないような物
語であった。