演目/三島由紀夫 近代能楽集

観劇日時/11.3.21.
劇団名/風蝕異人街
公演回数/第45回公演
演出・照明・音響・美術/こしばきこう
制作/実験演劇集団「風蝕異人街」
劇場名/アトリエ阿呆船


■演目1  班女 

純愛か思いこみか、失恋に狂った女(=宇野早織)の狂態。彼女はすでに、パトロン(=平澤朋美)も男(=李ゆうか)も認識出来なくなっている。
この狂女は、わざとらしい作られた演技のような気がする。本当の狂気はもっと抑えた怖さじゃないのだろうか? だからそれが演技計算の違いなのか、わざと自分をその世界に追い込んでいるのか分からないように見える。
男もパトロンも、狂女を使ってそれぞれ自己保身を図っているように見えるところが、どっちもどっちの感じがして面白い。

■演目2  葵の上

光(=三木美智代)が現代的な装いとスピードと諧虐味の強い人物を造形したのが新鮮でインパクトが強い。
一方、六条(=赤坂嘉謙)がごつい大の男で、その落差も狙いどころなのか不自然さが感じられず、逆に一種の不思議なリアリティがある。
コメデイリリーフの看護師たち(=山谷義孝・遠山達也)が、むくつけき男たちなのが意外に現実の看護師の本質の良い意味の一面を表していると言ったら失礼か?
     ☆
『班女』に感じる、愛の虚無と人間のはかなさ、『葵の上』は、男の愛と死への妄想はリピドーの宿命を感じる。
二作を通じて意外な配役と演出で、さらに近代能楽集を現代能楽集に変換する実験の妙味を魅せた。実験演劇集団の躍如たる存在感である。やはりこの集団は、しっかりとしたオリジナルによる作品にこそ妙味が出てくる。