演目/南 へ

観劇日時/11.2.27.
劇団名/野田地図 
作・演出/野田秀樹 美術/堀尾幸男 照明/小川幾雄
衣装/ひびのこづえ 選曲・効果/高都幸男
作調・演奏監修/田中傳左衛門 振付/黒田育世
映像/奥秀太郎 ヘアメイク/宮森隆行
舞台監督/瀬崎将孝 プロデユーサー/鈴木弘之
劇場名/池袋・東京芸術劇場中ホール

政治的な隠喩劇

 
地震国の火山の傍にある観測所、TVで野球を観るのが第一のやる気のない所長、哲学者を気取る研究員、そんな所へ火口へ飛び込もうとした自殺未遂の女が運び込まれる。と同時に新任の研究員が訪れる。
 女も新任者もお互いがお互いを疑っている。その駆け引きが言葉遊びを駆使して観客をあっけにとらせながら迷宮に誘い込む。
 新任研究員は火山の爆発が近いことをデータから推測する。女は揺れ方が違うから当分大きな地震はないという。
 300年前の大被害を出した大地震の時代によみがえる……当時の予言者の子孫が、観光地と化した観測所の傍で旅館を営んでいるために火山は爆発して欲しくない。
 一方、天皇を利用する怪しげな一行も、行幸をネタに地元の地域興しを勧める。
 物語は進行し、火山は民衆の潜在したエネルギーのメタファーであり、観測所はそれを良導すべき政治・行政の隠喩であろう。世界各地で起こっている現状はもちろん日本の現状をも象徴し、極めて政治的な意図の強い舞台である。
 旅行客たち、観光客たち、報道陣、そして某国の軍隊までをも連想させる群衆を演じる多数の演技陣のエネルギッシュで統制のとれた表現は演劇的であり目を見張らせる。総じて役者たちはよく動き、地震を表現する効果も恐ろしさとともにマンガチックな可笑し味がこれもいかにも演劇的であった。
(追記)これは観劇15日後の3月11日の時点からみると、東日本大震災を予告しているような気がする。
 出演者。
妻夫木聡・蒼井優・渡辺いっけい・高田聖子・チョウソンハ・黒木華・太田緑ロランス・銀粉蝶・山崎清介・藤木孝・野田秀樹