演目/シングル・マザー

観劇日時/11.2.25.
劇団名/二兎社
公演回数/36
作・演出/永井愛 美術/大田創 照明/中川隆一 
音響/市来邦比古 衣装/竹原典子 ヘアメイク/清水美穂
舞台監督/渋谷壽久 演出助手/鈴木修 
劇場名/東京・池袋・東京芸術劇場小ホール

生きる苦しみと団結の強み

 
子育て中のシングルマザーたちの物語。NPO法人を作って個人のマンション住宅で活動するが、理事長(=根岸季衣)と事務長(=沢口靖子)の他は二人(=枝元萌・玄覺悠子)だけだ。みんなパートの掛け持ちで時間がないのだ。
国会への陳情やデモの動員だっていつも人手不足。電話相談の最中に突然、子供が怪我をしたといって保育園からの呼び出し、等々のテンヤワンヤの騒動の連続。
DVで家出した妻の携帯からここの存在を知って訪ねて来た紳士(吉田栄作)は、自分が被害者だと言う。
だが彼女らは騙されない。そういう例はたくさんあるのだ。夫にDVを受けた経験のある事務長は身が竦み許せない。
だがやがて反省していく紳士に事務長は微かな愛を感じるのだが、紳士は分かれた妻が年下のフリーターと結婚すると知って、しかもその妻が会わせてくれない愛するわが子が、知らない若い男を新しい父親と呼ぶことを知って逆上する。
そんなこんなの後では却って団結力は強くなり、今度は本当に彼女たちの力になろうとして紳士は変身する。
シングルマザーの原因がすべて夫のDVだけにあるような描き方は少々狭い見方なのではないかとも思うのだが、逆にそこに絞ったとも言えるかもしれない。
いわゆる社会派の、現実を抽出して必要な部分を意識的に拡大してその病巣を描く物語なのだが、僕たちがほとんど知らないような世界が展開されて、一種の社会勉強になったような珍しい観劇経験だった。
そういう物語をシビアに、しかしそこは芝居である以上、経験豊富な演技者たちの力によって、ある程度のエンターテインメント性を織り込んだ舞台は魅力があった。