演目/あらしのよるに

観劇日時/11.2.13.
劇団名/ぐるーぷえるむの森
原作/きむらゆういち(小学館刊・小説「あらしのよるに」)
脚本/杉本明美 演出補/榎本玲子・杉本瑠美
演出協力/鈴木喜三夫(座・れら) 音響/沼本美和
照明/遠山洋魅 衣装/浅利美樹子 道具/chans
音楽/Yukii 
舞台監督/今野史尚 舞台監督助手/戸塚直人(座・れら)
制作/杉本瑠美 イラスト/山田涼風 その他
出演者/16名 他に「やまびこ座」の男性3名
劇場名/札幌・やまびこ座

想いと表現力

 
お母さんたちの劇団が創る、この哲学的な内容の話に対する強い想いと、その想像を超えた高い表現力は、初演と比べて基本的には変わらない。その詳しい観劇記は「続・観劇片々」第31号に発表した。
今回観て特に新しく感じたことは、このメイとガブという名前の、本来は共生出来ないはずのヒツジとオオカミという二者の関係が、単なる友情と言うよりは男女の恋愛感情に感じられたことだ。それは『ロミオとジュリエット』の悲劇を髣髴とさせる。
 それは友情・恋愛のどちらでの良いとも言えるし、台詞では何度も友情と言ってはいるのだが、理由の付けられない無償の愛は友情よりも恋愛感情と言った方がピッタリとする気がしたのだ。
 友情に無償の愛がないとは言えないが、しかし恋愛感情と言った方が感覚的には受け入れ易いのだ。だがそれはどちらでも良いのだ。問題はそこにはないのだから……
そしてもう一つ深読みすれば、今でも世界中に起こっている世界観の違いによる戦乱の源泉を融和させたいという悲願も込められているのかも知れない。
 代わってマイナス要因を感じたことは、大自然の情景というか描写が弱いことだった。
 演技がその背景の弱さを越えていたとは言えるのだが、発端の嵐の場面、雪の山越え、狼たちとの対決などのシーンに人知を越えた大自然の怖さを感じさせると、もっと二人の繋がりの強さが深く印象付けられたのではないか? と思った。
 もちろん、そういう技術に頼るだけではいけないのだが、そういう技術が内容の深さを助けるのは間違いがないと思うので、少々物足りない欲張った思いもあったのだ。
 再演する機会があるのならば、今度はそのことについて考えてもらえばより良い舞台が出来るであろうと期待したい。