演目/影についての三部作

観劇日時/11.1.22
劇団名/舜プロジェクト
公演回数/Vol.6
衣装協力/西村友美子 照明/大橋はるな
主催・企画・制作/瞬プロジェクト
劇場名/ターミナルプラザことにPATOS

夢幻の時間

 
真っ暗の中で、何かがひそひそと蠢く気配がする。懐中電灯の赤っぽい微かな光が交錯すると、二人の女性がフラッシュバックのように浮かび上がる。だが彼女たちが何をやっているのかは分からない。だが蠢いていると言うよりは弾けているようなイメージだ。
 やがて照明が普通に点くと、舞台は二人のダンサー(=平原慎太郎・東海林靖志)がお互いに持った懐中電灯を照らし合いながら、お互いの踊る肢体を一瞬の交錯で浮かびあがらせる。
 ダンサーの単純な動きの繰り返しだ。だんだん退屈するのは、体の動きは流麗なのだが驚きの要素がないから次第に睡魔が襲う。
 フト気がつくと幻聴と幻視が見える。幻聴とは踊り手が
微かに何かを呟いているのだ。ほとんど僕が毎夜の夢に見る誰かの呟くほとんど意味のない日常の会話の断片だ。だが何を言っているのか急に神経を集中しても、そのつぶやきはスルーして消えて行く。それがいかにも伝えるべき意味の薄い言葉とも言えぬ言葉なのだ。
 幻視はもっと単純だ。交錯して浮かび上がる光景がフラッシュバックのように見え隠れするのだ。さらに懐中電灯の光線が波のように暗い舞台の中を空中浮遊するのだ。 
だがそれはほとんど一瞬のことだから、当然それは僕の幻視だろう。
 照明の謎めいた使い方が目立つというよりは、照明を使って目立たせたような、しかしこの舞台はその幻視・幻聴を感じさせる摩訶不思議な力があったのだ。「影について」という通り陰影の印象の強い舞台である。
写真は松村サキ、そして音は高橋慶。