演目/軋 み

観劇日時/11.1.10.
劇団名/Infidite
作/ブラジリィー・アン・山田 演出/森岡利行 
舞台監督/堀吉行 美術/須田桃李 音響/岩崎亜希子
照明/原宏昌 演出助手/吉住真理子・飯坂泰子
衣装協力/小原敏博 ヘアメイク/高木剛・永野清香
宣伝美術/長屋悟 宣伝写真/宮坂浩見 
制作/千葉しおみ・甲斐範美・友野真里
プロデューサー/渡邉芳樹
劇場名/東京・中野・テアトルBONBON

背景の絵が歪んでいる

 
売れっ子の漫画家(=芳本美代子)とその夫でフリーターの男(=金山一彦)、担当編集者(=平田敦子)、そしてアシスタントで独立を目指す女(=齊藤来未子)、実力者のアシスタント(=MARU)。
 夫とアシスタントは不倫しているらしい。ある夜、夫がバイトから帰って来るとそのアシスタントの女が殺されている。犯人は嫉妬に狂った漫画家らしい。そこから幕が開く。
 だが本当にそのアシスタントは死んでいるのか? 嫉妬に狂った漫画家の芝居なのか? 裏稼業の死体処理業者(=中村哲人)という怪しい男が来る。
 居なくなったアシスタントを探して元・夫(=木村慎一)が訪ねて来るが、この男もアシスタントの兄を自称したり何となく怪しい。
 漫画家のアイデァの秘密を握っていると称する元・アシスタント(=原田麻由)が出現して事態はますます混乱する。
 つまり、そういう魑魅魍魎の物語の中で、人間の欲望や自己弁護やそういう弱みとそれを何とかカバーしようとする生臭い現実をスリラータッチで表現する。
 アシスタントは本当に殺されたのか殺されたように芝居を打ったのか判然としない。あるいは観客を誑かしているのかもしれない。その曖昧朦朧とした物語の展開が、いつ解明されるのかと期待しつつもついに結論を出さないままに幕を閉じる。世の中の結末なんて所詮そんなものさ、と開き直られて、それもそうかなと言う苦笑を漏らさざるをえない渋い一幕である。
 男のいつも怒鳴り散らす演技がやや鼻につき、こんな自分本位な男に売れっ子の女が離れられない心情がちょっと分かり辛いのだけども……
 元・アシスタントの女がチーフアシスタントの男に「お前の絵は背景が歪んでいるんだよ、デッサンが狂っているんだよ」と言われて、編集者に「それが彼女の世界を見ている視線なのだ」と言われる。つまりこの言葉がこの芝居の核なのかもしれない。