演目 ただちに犬 Bitter
観劇日時/10.8.4.  10.8.7.  10.8.8.
劇団名/劇団 どくんご
構成・演出/どいの 
制作/時折旬・プラスマイナスゼロ・黄色い複素平面社
エグゼグティブ・アドバイザー/かえちん
劇場名/北海道・士別市・あすなろ公園・野外テント劇場
深川市・花園公園・野外テント劇場

物語性と寓意性の希薄
今年は、去年の『ただちに犬Deluxe』の変形版というか、改訂版というか、つ
まりBitter版であり、といっても普通の戯曲のようにオリジナルを改訂したも
のではない。
そもそも『どくんご』は、劇作家・演出家・スタッフキャストという近代演劇
を創るヒエラルキー構造という創作常識を無視するところから始めているのだ。
役者がそれぞれ自分たちの演じたい思いを表現して、それらを参加者全員で取
捨選択して作り上げるという方式なのだ。
だから、再演というのは『どくんご』の舞台にはあり得ない。1本の舞台を打
ち上げると、次には全く新しく第一歩から創りあげるのだ。
今回の作品もそのように創ったのだが、それがたまたま去年の大枠に沿ったも
のになったと言うことであろう。
ただ僕は観ていて、何とも昨年の焼き直しのように感じていささか手抜きのよ
うな気がするのが拭えなかった。
さらに、最初に観た『ベビーフードの日々』もその次の『ただちに犬deluxe』
にも、明らかな物語性・寓意性が強く感じられたのに、今回はそれが希薄だっ
たことが残念であった。
『ベビーフードの日々』には、マイナーな世界に生きる人たちの切ないアピー
ルが強烈に感じられたし、『ただちに犬deluxe』では、責任転嫁の人たちが表
わす人間の本質と、その人間たちが残す生と死との哀愁が底にあるのが感じら
れ、それらの2作品には『どくんご』の特異な演劇存在そのものの絶大で強力
な魅力と同時に、僕の物語原理主義者をも引き付けたのだったが……
出演者は暗悪健太・五月うか・2B・まほ・柳原良平・ワタナベヨヲコ。