観劇日時/10.7.28.
劇団名/シアター・ラグ・203
作・演出/村松幹男 音楽・音響/今井大蛇丸
照明/柳川友希 宣伝美術/久保田さゆり
制作/Theater・ラグ・203
劇場名/ラグリグラ劇場
視点の転回
何度か観たこの芝居、最初、気になったのは「容疑者にほぼ完全なアリバイが
あったのに、捜査陣はなぜ最後までそのアリバイが分らなかったのか?」とい
う点と、「腐乱した死体が発見された後から、容疑者の女は被害者の死体と対
面したはずなのに、ラストでなぜ被害者の腕のホルマリン漬けを大事に持って
いることができたのか?」という2点であった。
前項の疑問はすぐ解決された。今回の初日でごく自然に納得されたというより
は、納得させられたというべきであろうか?つまり演技のリアリティが、あり
得ないと思っていたことを、そういうこともあり得る事実なのかなと思い込ま
されてしまったのだ。
さらに死体から切り取った腕の疑問も、これは事実としての腕ではなく、女の
果たせなかった想いと憧れの象徴としての幻の腕であるということであろう。
全体がリアリズムなのでつい、論理的矛盾と思わせられ勝ちだったが、最後に
それを突き抜けた表現に惑わされたのであろう。
さて今日の千秋楽を観ていて思ったのは、今までこの芝居は容疑者の女の側か
らの真実という視点で展開していたのだが、もしこれを逆に男の側の真実とい
う視点を中心に描いたらどういう展開になるんだろうか?ということであった。
そのことをアフタートークで話合ったのだが、面白そうな芝居になりそうだ。
その場合、男の視点と女の視点を交互に、例えば、芥川竜之介の「籔の中」み
たいな話になるのだろうか?
ラグの芝居は、そんな突飛な想像を喚起させる水面下のエネルギーを潜在させ
ているから、同じ芝居を何度観ても飽きないどころか、次に観客の想像力に何
を起こさせるのか興味が尽きないのだ。