演目 忘れたいのに思い出せない
観劇日時/10.7.10.   劇団名/yhs
公演形態/23th シアターZOO提携公演
脚本・舞台美術/南参 演出/手代木敬史 
舞台監督/上田知 照明/相馬寛之 音響/橋本一生 
作曲/川西敦子 小道具/後藤貴子・櫻井保英・ほか
衣裳・メイク/岩渕カヲリ・ほか
演出助手/曽我夕子・隅田健太郎
制作/水戸もえみ・こもりまりも・大塚黒
WEB/イシハラノリアキ・大塚黒
宣伝美術・イラスト/坂本奈緒 プロデユーサー/亀山統
劇場名/シアターZOO

破壊した家庭の行く先は
大学講師のガンマ(=吉竹歩)は二度の離婚の結果、現在は独身で家庭を顧み
ない。認知症で寝たきりの母親(=福地美乃)と前妻の連れ子・トオル(=岡
今日子)と暮らすが、ガンマとトオルの仲は険悪だ。
市役所の福祉担当者・カヤモリ(=能登英輔)は常識外れの変な男。宗教法人
の職員(=青木玖璃子)は経営する介護施設に母親の収容を勧誘する。
カヤモリの紹介で来るヘルパーのタマミ(=山下カーリー)は安月給で身が入
らない。研修生のゲンプ(=小林エレキ)とマスト(=三戸部大峰)はいずれ
も半端な小悪人だ。ちょっと常識を外れた人たちのグチャグチャな関係の中に、
母親の連れ合い(=イシハラノリアキ)の亡霊が現れる。
これらの展開は、いかにも現代の家庭と捩れた人間たちの存在を抉り出すが、
最後に悪人のゲンプは自滅し、利益優先の宗教法人は引き下がり、シングルマ
マを選択したトオルは、記憶を喪失した血の繋がらない祖母との微かな愛情の
繋がりを確認してハッピイエンドの終幕を迎える。
異常な人間の存在の不思議な可笑しさ意外さは、笑いが少なくyhsらしくない
舞台だが、現代家族の欠陥の象徴を描いた身に迫るシリアスな舞台であった。
白い小さな石を敷き詰めて楕円形に囲った庭のような場所にベッドを置いた舞
台は、現実離れをしていながら病む母親の心象風景を象徴しているようだった。