演目 夢二夜
観劇日時/10.6.26.
公演形態/完全即興 竹内実花
劇場名/西区・琴似・ことにパトス

一瞬の女の形
単調なメロディと平坦なリズムのピアノ(=千野秀一)が陰々滅々な感じで延
々と奏でられると、白塗りの女(=竹内実花)が登場する。蠢きと痙攣と悶絶
が、これまた延々と続けられる。ひたすら怨念を丸出しにした感じだ。
ずっと以前に観た香月人見の舞踏に酷似していた。一種の自己陶酔の表出であ
り、客観視に耐え得る訓練というか昇華がなされていないのだ。ひたすら自分
の官能の動きに酔っているだけなのだ。舞踏というものはそういうイメージが
大きいのだが、それにしても内面を訴えかける力が薄い。
舞台の隅に控えた墨絵師(=杉吉貢)が、60センチ×180センチくらいの画仙
紙に、グイグイと女を描いていく。様々なポーズを、紙を縦に使ったり横に使
ったりして、次々に1時間10分ほどの間に50枚くらいの女の存在を墨絵に写し
出す。
その絵は動き回る女の一瞬の形を5本の筆と、濃度を様々に調整した墨汁を自
在に使って、流れるような濃淡の曲線で表した抽象とも具象ともいえない、し
かし象徴的で印象的な絵を描いていく。
 終わりのない苦悩と悩みの営みのような舞踏は、クライマックスのないまま
 突然に終わる。暗い中、ピアノだけが残り、やがて音も突然消えていく。舞
 踏よりも墨絵に強い魅力を感じた舞台であった。