演目 ぬけがら
観劇日時/10.6.16.
劇団名/文学座
公演形態/旭川市民劇場6月例会
作/佃典彦 演出/松本祐子 装置/石井強司 
照明/金英秀 音響効果/藤田赤目 衣裳/井川淳子
舞台監督/三上博 演出補/西本由香 制作/荒松卓哉
劇場名/旭川市公会堂

父の生涯
45歳、子どもなしの郵便局職員(=若松泰弘)がかりそめの浮気の帰途、酒酔
い運転で事故を起こし職場を馘首となり、心痛で母は他界、妻(=山本郁子)
からは離婚届に捺印を迫られる。
悪いことは重なるもので、87歳になる実家の父親(=飯沼慧)は強度の認知症
になる。だがこういう経過は実はどうでもいい。芝居の本質はそこには無いか
らだ。
これからがシユールな展開になる。認知症の父親が突然に脱皮して20歳若返り
(=鵜澤秀行)元気な姿をみせる。
しかも次々に10から15歳くらいづつ若返り(=関輝雄・高橋克明・椎原克知)、
ついには戦争直後の20歳(=柳橋朋典)の軍国少年にまで遡る。
つまりここでは、昭和現代史をバックに65年に亘る一人の男の人生が振り返ら
れるのだ。そしてまたそれは様々な生き方を生き抜いた男の人生をその息子の
立場から客観の眼で眺めるという形になっている。
しかも面白いのは、若返った父親と現在45歳の男が、親子として普通に会話を
し、考え方を述べ合うという不思議な情景が無理なく描写されるということだ。
これは下手をすると荒唐無稽の耐えられない感じになるだろうが、ちっとも違
和感がないのが不思議というか不自然でないことが不思議である。
それとこの物語は一種の風俗劇の体裁だが、おそらくこのままではシュール度
が高くて、TVのドラマとしては成立しないような予感がする。
その他、浮気相手が太田志津香、父親と同時に若返る母親=添田園子、葬儀社
の社員に奥山美代子が出演。