演目 バッコスの信女
観劇日時/10.6.13.
劇団名/実験演劇集団「風蝕異人街」
公演回数/第42回公演
構成・演出/こしばきこう 原作/エウリピデス
照明・演出/こしばきこう 振付・演出/三木美智代 
協力/乙川千夏・chigusa
制作/実験演劇集団「風蝕異人街」
劇場名/札幌・中央区・栄輪ビルB1「アトリエ阿呆船」
出演/語るバッコスの信女=三木美智代・平澤朋美・李ゆうか・宇野早織)
   舞うバッコスの信女=布上道代
   奏でるバッコスの信女=abt


実験演劇集団の、正に実験劇感
新しい信仰の出現としてのバッコスという一般的な概念から脱出して、当日パ
ンフによると、「女性的なるものの怖さ、不気味さをテーマにする」という演
出意図。
それを「語る信女」、「舞う信女」、そして「奏でる信女」という風に三つの
グループに分けて一つの舞台で共演するという洒落た展開。
しかし「語る」と言ってもそれは台本を読むだけだし、一人の役者が何役も演
じるし、独特の風蝕異人街節は難解で聞き取り難く話の展開は中々了解しがた
い。
「舞う」は「語る」の役者も一緒に舞うのだが、これがまた独特の舞踏だから、
その舞踏自体は魅力的であっても信女たちとの心の中というか話の展開は分ら
ずじまいだ。
「奏でる」は実に奇妙な音の流れだ。抽象的なむしろ機械的・無機質な音の流
れであり、これまた理解不可能である。
だが、演劇が物語主義に陥っているのは現代演劇の衰退であるとするならば、
この「風蝕異人街」の、それこそ実験演劇の大いなる実験ではあると思う。
この集団の、『授業』『奴婢訓』『身毒丸』『青森県のせむし男』『チェーホ
フ祭』などなど、物語性の強い演目に、その実験性の成果を観たために、この
『阿呆船』に通うのだが、中々意を尽くせぬ焦慮が強い。次の『女中たち』に
大きな期待を持とうと思う。