演目 らくだが踊る
観劇日時/10.6.5.
劇団名/劇の素 艶屋
公演回数/第6回
作・演出/松浦みゆき
照明/豊島勉 音響/松下音次郎
スタッフ/矢野ツカサ・前内ちかげ・MAMU
劇場名/アトリエ練庵


シュールな変身譚果
母(=松浦みゆき)と娘(=大友理香子)の物語。ある朝母が目を覚ますと、
娘が自分と同じ位の年齢(=小川恵理)になっていることを発見する。それは
母親もその娘を妊娠中に経験したことだった。
だけど、母はその後、出産すると元の身体に戻った体験から、娘もそうなると
信じたいのだが、娘が勝手に妊娠したことは許せない。
一方、娘は自分の老醜の姿を彼に見せたくないからという理由で、母に無断で
堕胎をする。
こういう物語自体はシュールのようで、自己中心的な世界を見るとどうなるか、
とでもいうような比喩が強くて面白いのだが、残念ながら微細なデテールに辻
褄が合わず説明の無理な部分が続出するので、その矛盾に気を取られて話に入
って行きにくい。
さらに変に生活感のリアリティを強調するようなシーン、例えば仕事に出かけ
るとか、誰かから長電話があったりとか、全体の雰囲気や流れとの違和感が強
い部分がとても気になる。そういう場面の演出上の扱い方にもよるのかもしれ
ないのだが……抽象的な構成とか演技とかが必要なのではないのか? 余りにも
生の現実が混ざり込み過ぎると異質感が強すぎて感情が行き場を失う。
そして特に、松浦みゆきが今回、自己満足的なとても不思議で不自然で様式的
な演技をする。これは計算された演技なのか、稽古不足なのか、意識して計算
されたのならば逆効果だと思うし、練不足のためなら何をかいわんやである。
折角の変身譚的な面白い素材が、消化不良になってしまったのが惜しい。