演目 この青い空の下で
観劇日時/10.6.5.
劇団名/げきだん 青い空
公演形態/旗揚げ公演
原作/遊川和彦 脚本・演出/吉川勝彦
ピアノ演奏/清都萌
スタッフ/33人 出演者/46人
劇場名/小樽・市民センター マリンホール

楷書の舞台成果
第一幕は、第二次世界戦争の直前。大阪から駆け落ちしてきて沖縄で写真屋と
して成功し、団欒の家族を営む一家の話。その中にも戦争の影が次第に忍びい
る。
第二幕は、洞窟の中の野戦病院の悲惨な描写。その中にもあの写真屋の一家が
関わってくる。家族にも長男と次男はそれぞれ厭戦派と神国派に分かれるが二
人とも戦死する。そして陸上戦に巻き込まれる民間人たち。どんどん人々が死
んでゆき殺されていく。 
父親は「どんなことがあっても生きていろ」と常々言っていた。そして「笑顔
を忘れるな」とも。そして戦後、生き残った人たちの笑顔……
高校生と大学生そして一般公募の33人のスタッフ46人のキャストという大所帯
が織りなす、微細部分に拘った一大叙事詩であり、会場は子供から若い人たち
中高年の市民たちで超満員おそらく普段は芝居など余り観ないような人たちだ。
僕自身は、いまさらこういう芝居を観る必要はないと思っているが、特に戦争
の現実感覚の無い人たち、繰り返したくない経験を持つ人たちもぜひ観ておく
べき舞台であろう。
北海道でなぜ沖縄という疑問もあるだろうが、この舞台は沖縄という一地域の
限定された話ではなく、たとえばホロコーストなどと同じく全世界に普遍的な
物語なのだ。
一般公募のスタッフ・キャストだからいわゆる市民劇のような作りだが、リア
リズムに徹底した舞台装置や衣装なども含めて、近頃珍しい楷書で骨太の舞台
であった。
先日、亡くなった井上ひさしの絶筆も「過去ときちんと向き合うと未来の夢が
見えてくる。過去を軽んじると未来から軽んじられる。未来は訴えている」で
ある。