6月

演目 悲しき天使たち―2010年の三人姉妹―
観劇日時/10.6.1.
劇団名/TPS
公演形態/tps 小文字で大作シリーズ
原作/アントン・チェーホフ
構成・演出/宮田圭子 照明/矢口友理 
舞台スタッフ/TPS劇団員 宣伝美術/若林瑞紗
ディレクター/斎藤歩 プロデューサー/平田修二
制作/TPS
劇場名/シアターZOO

教科書のような舞台
20歳ころに観た『三人姉妹』を思い出した。50年以上も昔は僕も単純だったし、
その劇団も未熟だった。そのころはチェーホフなんて、さっぱり面白くない敗
残人生をそのままに描いて、憂鬱で倦怠な人生にどういう意味があるのかと否
定的だった。
日本もやっと戦後が終わって興隆期のトバ口にあり、僕も若くて何物も知らず
前途洋々の感じが強かった。
その後、さまざまなチェーホフを色んな劇団や劇場で観てきたのだが徐々に人
生が感じられるようになってチェーホフの深さ面白さを感じられるようになっ
てきたような気がする。
ごく最近観た『実験演劇集団・風蝕異人街』が演じた『三人姉妹・憂鬱』がわ
ずか40分で舞踏という表現法だし、しかも女3人だけの出演で演じたのに、ま
さに『三人姉妹』の真髄を描いていたし、それは面白かった。
今日の舞台はオリジナルをきっちりと演じているのだが、さっぱり面白くない
のは、楷書体でそつなく表現しようとして、それは演技者たちの勉強としては
有意義だが、本を読んでいるようなものだ。
やっぱりそこに生きた人間の息遣いを感じたいわけだし、残念ながら精一杯、
演出も演技者たちも正確に演じようとするだけで、生きた人間が感じられなか
ったのだ。